第一話 正式サービス開始宣言
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層までクリアしなければいけないとなると、それはもはや確定された未来と同義である。
だからこそ、皆は恐怖している。死に対して――その死の矛先が、自分に向くことに対して。恐怖しているのに、未だに《本物の危機》なのか《オープニングイベントの過剰演出》なのか、考えあぐねている。
その為、広場は思ったよりも静かだ。静寂というほど静かではないが、大騒ぎというほどうるさくもない。
その時、これまでプレイヤーの思考を先回りし続ける赤ローブが、右の白手袋をひらりと動かし、一切の感情を削ぎ落した声で告げた。
『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』
それを聞くや、皆がほとんど同時に右手の指二本を揃え真下に向けて振っていた。広場いっぱいに電子的な鈴の音のサウンドエフェクトが響く。糸目の少年も、それにならって操作をする。
出現したメインメニューから、アイテム欄のタブを叩くと、表示された所持品リストの一番上にそれはあった。
アイテム名は――《真価と幻想の手鏡》。
ただの手鏡でもいいのに、何故、真価、幻想という単語がついているのか疑問に思う少年だが、きっと意味があるものだろうと思いその名前をタップし、浮き上がった小ウインドウからオブジェクト化のボタンを選択。たちまち、きらきらという効果音とともに、小さな四角い鏡が出現した。
何でもないように手に取って観察するが、特に変わったところは見られない。普通の手鏡だ。別に覗きこんで問い掛けたからといって、世界で一番美しいのは――などという決まり文句を言ってきたりはしない。間違いなく、現実世界の自分の姿が映っていた。
(――って、現実世界の姿と全く一緒のアバターかい!?)
今更になって気付き、別の所で驚愕する糸目の少年。歳早いうちから脱色してしまった整った白髪はきっと、現実世界では人々の印象に深く残される事だろう。その上、整ったそれでいてまだ幼さを残す顔立ちに、糸のような細い目は、そのギャップ故に人々の注意を瞬く間に惹きつける。
それが、現実世界での彼の容姿。幼さを残しながらも思考の読めない、常軌から逸した特異性のある顔だ。
何故、現実世界のそれをアバターに・・・・・・などと呆れていると、突然、周りのプレイヤーが白い光に包まれ、同様に少年自身もその光に包まれ、視界がホワイトアウトした。
それが継続したのは、ほんの二、三秒。視界が回復したのは、更にその三、四秒後だ。
チカチカする目を慣らしながら、ゆっくりと再び手鏡を覗き込むと――
「・・・・・・誰やねん」
反射的に、その言葉が出た。先ほどまで映っていた白
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