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ソードアート・オンライン 奇妙な壁戦士の物語
第一話 正式サービス開始宣言
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人で埋め尽くされた――《はじまりの街》の広場であろう場所だった。そしてその場にいる少年を除く誰もが、この事態に混乱していた。

 空を見てみると、時刻は夕暮れ時。この世界でも、どうやら時間という概念は存在するらしい。

 しかし、問題はそこではない。一番の問題は、広場の中央辺りの真上に見える――《WARNING》という真紅のパターン表示されたものだ。真紅のパターンは次第に数を倍に、更に倍にと増やしていき、あっという間に空を、そしてこの世界を包み込んだ。良く見てみると、その真紅のパターンには《WARNING》そして《SYSTEM ANNOUNCEMENT》の2つの単語が交互かつ規則的に並んでいた。

 それが終わった途端、空を埋め尽くす真紅のパターンの中央部分から、まるで血液の雫のようにどろりと垂れ下がる。その液体は高い粘土を感じさせる動きでゆっくりとしたたり、しかし地面に落下することなく、赤い雫はその形状を空中で変化させる。

 そうして出現したのは、身長20メートルはあるであろう、真紅のフード付ローブをまとった巨大な人の姿だった。しかし、人の姿といっても形だけである。その人の姿は巨大さ故にフードから顔が丸見えの筈なのだが――そこには、何も無い。ただ深い闇が、そのフードの中身だった。――つまり、顔が無いのである。

 それがあってか、周りのプレイヤーは更にざわめく。「ゲームマスター?」「でも何で顔がないの?」などという声が聞こえてくるに、目の前の真紅のフードの何者かがゲームマスターなのだと確信を持つのに、時間は掛からなかった。

 と、その喧騒を抑えるかのように、不意に巨大なローブの右袖が動く。

 ひらりと広げられた袖口から、純白の手袋が覗いた。しかし、やはりと言うべきか袖と手袋もまた明確に切り離され、肉体がまるで見えない。

 続いて左袖もゆるゆると掲げられた。約10,000人のプレイヤーの頭上で、中身のない白手袋を左右に広げた直後、低く落ち着いた、よく通る男の声が、遥かな高みから降り注いだ。


『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』


 それを言われて、大多数の人間が納得のいったような、しかし怪訝そうに顔を歪める。少年だけは例外に、口元を僅かに吊り上げて、その閉じているのか開いているのか分からない糸目でその真紅のフードを見ていた。


『私の名前は茅場明彦(かやばあきひこ)。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』


 その名前に、少年を除く誰しもが驚いた。何故なら茅場明彦とは、数年前まで数多ある弱小ゲーム開発会社のひとつだったアーガスが、最大手と呼ばれるまでに成長した原動力となった、若き天才ゲームデザイナーにして量子物理学者。

 彼はこのSAO(ソードアート・オンライン)の開
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