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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十五話「午後の紅茶」
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ですわね」


「うちの教室に? この前リシャルトが来たばかりなのに?」


「ええ。なんでもさる高貴な身分の令嬢とか。学園長が絡んでいるという話もありますわ」


「学園長が? なにか訳ありなのかしら……。でもこの学園に高貴な身分って言われてもね。そんなのここだと珍しくないわよ? ファーレンガルト家にローレンフロスト家、アダマンロイヤル家やポワード家なんかもあるわね。高貴な身分のバーゲンセールじゃない」


「ちょっと、武門のファーレンガルト家と由緒正しきローレンフロスト家を一緒にしないでくださる? それにアダマンロイヤ家はともかくポワード家は成り上がりですわよ」


「その言葉はいただけないな。成り上がりだろうとそうじゃなかろうと、努力をして勝ち取った地位を貶めるのはどうかと思うぞ?」


 ポワードなんて名前は聞き覚えがないが、きっと今の地位に至るまで相当の試練があったのだと思う。その人の家柄の良し悪しはともかくとして、見るべきところはちゃんと見て評価するべきだ。


「……確かにリシャルト様の仰ることはごもっとですわ。あんなことを言った自分が恥ずかしいです……」


 やんわり諭すようにそう言うと、分かってくれたのかリンスレットはしょんぼりした。


「わかってくれたならいいんだ。大事なのは素直に認めるべきところを認め正す意思を持つことだ。それが出来るリンスレットは偉いよ」


「リシャルト様……」


「むぅー……!」


 目元を朱に染め潤んだ瞳で見上げてくる。反比例して赤髪のお嬢様の期限が悪くなる一方だった。


 しかし、あの婆さんが関わってるとなると、どんな娘なのか気になるのもまた事実。なにしろ問題児ばかりで有名なレイブン教室に編入するのだから。


 ――個性的な娘が来そうな予感がするな……。


「聞いた話ですと、実技の編入試験では〈聖精霊〉を使役したようですわよ」


「ほぅ、聖精霊か」


 聖精霊は気位いが高く、人を選ぶため扱いが難しい精霊だ。そのため五大元素精霊の中でも使い手はそんなに多くはない。


 清らかな心を持つ姫巫女の中でも取り分け、高潔で澄んだ乙女でないと心を開かないと言われている。


「あ、ちなみにすっごく胸が大きくて綺麗な娘って聞きましたよ」


「なんだその情報は……」


「あらリシャルトさん、興味がおありですか?」


 朗らかに微笑むキャロルの言葉に眉をピクッとさせたクレアが冷めた眼差しを向けてくる。


「……ふーん。あ、あんた、そんなに胸が大きい子の情報が知りたいわけ」


 心なしか、棘が多いようだ。


「そうなのですかリシャルト?」


 
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