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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十五話「午後の紅茶」
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からだろうか。


 ――老いたとは思いたくないものだな。


「まあ、そんなところに立ってないで座ったらどうだ。よかったら食べていきなよ」


「そ、そこまで言うなら仕方ありませんわね」


「お嬢様はリシャルト様の隣が良いとのことですわ」


「キャロル〜っ!」


 微笑ましい主従だな。顔を赤くしてポカポカとメイドの肩を叩くお嬢様の姿につい顔がほころぶ。


 そんな俺の隣では頬を少しだけ膨らませたもう一人のお嬢様がジト目でこちらを睨んでいた。


「――? どうした、そんな顔をして」


「べつに。節操がないわねって思っただけよ。まったく……」


「うん?」


 この年頃の女の子の心理は魔術の秘奥書より難しいと思う。


 コホンと咳払いして俺の隣に座ったリンスレットが若干目を逸らしたまま話を続けた。


「そ、それで……ランキングの方は順調とのことですが、怪我はないですの?」


「ああ。まあ怪我と言ってもどれも軽いものだし。そもそも俺が未熟なだけの話だからな。心配には及ばないさ」


「そうですか……。それを聞いて安心しましたわ」


 ホッと一息つくリンスレット。補足するようにキャロルが茶々を入れ始めた。


「お嬢様はリシャルトさんのことが心配なんですよ。いつも激戦だと聞いていたものですから」


「キャロル! よ、余計なこと言わないでっ」


 さらに顔を赤くして俯くリンスレットに温かな気持ちが沸き起こる。


 ごく自然と手が伸び、その頭を撫でた。


「そうだったか。それはすまなかった。この通り俺もクレアも問題ない。心配してくれてありがとうな」


「あ、う……」


 ボンッと頭から湯気が出るほど顔を真っ赤にするリンスレット。その隣ではなぜかキャロルが顔を輝かせていた。


「あらあらまあまあ!」


「ちょっとリシャルト! アンタなにしてんのよ!」


 何故か目を怒らせたクレアが二度目の牙を剥く。


 それまで、もぐもぐと一人だけアンパンを食べていたエストが静かな眼差しを向けてきた。


「リンスレットだけずるいです。エストにもなでなでを要求します」


「なんだこのカオスは」


 一人俺は頭を抱えた。





   †                    †                    †





 ようやく落ち着きを取り戻し、賑やかなティータイムを楽しんでいた頃。


 優雅にティーカップを傾けていたリンスレットが唐突に話を切りだした。


「そういえば、レイブン教室に新しい編入生が来るそう
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