混乱
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う逃避の心。それが彼女を駆り立てる。
「リーン!おいリーン!!」
彼の必死の呼びかけさえも、今の彼女には苦痛にしかならない。この化物を一瞬でも長く生かしておくわけには行かないと、更に攻撃を激しくする。魔術によって召喚された彼女の愛剣である細剣が、彼の心臓目掛けて突き出される。これだけ心身に影響を受け冷静さを失っていても尚、この攻撃には一切の曇りがない。彼女もまた、一流の魔術師であることの証であった。
「ウ、ガア!?」
ギリギリのところで心臓は避けたものの、怪我によって身体が思うように動かない彼には、完全に攻撃を避けることが出来なかった。よりにもよって、利き腕である左腕に攻撃を受けてしまう。細剣の扱いについては【暁の風】内でもトップのリーンは、魔術と併用することで、鉄板くらいは突き破ってしまう程の力量を持っている。実は、【剣の王】に戦いを挑まれたことがある程の腕前なのだ。・・・権能も使用しない彼に、一撃も当てられずボロボロにされはしたが。
そんな彼女の細剣が、ヘルの腕の骨を易々と貫く。リーンが剣を抜くと、鮮血が病室に舞った。
「ク、ソ・・・!何がどうなってるんだよ!?」
尋常ではない痛みが彼を襲うが、彼はそんな些細な事に頓着しない。彼の心を占めるのは、最愛の恋人のみであった。
(リーンが俺を殺したいほど恨んでいる・・・とかは違うよな。突然様子が可笑しくなったし・・・精神操作か?何処かのカルト魔術師でも襲ってきたか?)
この病院で騒ぎを起こせば、【聖魔王】の怒りに触れるということは誰でも知っている。ならば、病院内の人間を操り暴れさせることで、労せずして幾つもの魔術結社の戦力を削ることが出来る。・・・ただし、この病院は悪意を持った者を探知するという結界が張り巡らされている為、最初から病院内に混乱を巻き起こそうとする者は入れないようになっているし、非常に高度な物理精神複合結界もあるために、外から魔術をかけるというのも、人間には不可能と言っていい。
(となると・・・)
連続で繰り出される神速の突き。本来なら動かすことすら困難なほどに傷ついた身体を魔術で無理やり動かして、彼は考える。リーンを救う方法を。
(どうする?どうすればいい!?)
そんな彼に、正に天からのお告げのように、声が聴こえてきた。
『気絶させろ!』
有無を言わさぬその男の叫び。切羽詰ったようなその叫びに動かされ、彼は反射的に腕を動かした。
「う、オオオオオオ!!!」
傷口から血が吹き出るのも構わない。身体の隅々から響く痛みを無視して、彼はリーンへと突っ込んだ。
「来るな、化物ォォォォォォ!!!」
今まで防戦一方だった化物が攻勢に移っ
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