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東方小噺
目指せ魔法使いと死神娘
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めのヒントもくれていた。ゲームである以上、勝ち目がゼロなのは駄目だと思ったのだろう。「前向きな奴は渡れない」と。
 そしてその結果、私は後ろ向きで辿りついた。
 予想通りなら本来渡れないはずの河。小町が何らかの形で渡らせてくれたのだろう。
 
 体を占める達成感のままに、私は小町に言う。

「私の勝ちだ」
「……あたいの負けさ。仕方ない、認めるよ」

 その言葉に、私は天を仰ぎ見る。
 確かに、渡ってみせたのだ私は。

 仕組みに気づいたとき、何としても渡ってみせると決めていた。
 三途の川。生者には――普通の人間には、決して渡ることかなわぬ河。
 だというのに小町は言った。博麗の巫女、と。霊夢が、簡単に渡ったと。
 ありとあらゆる縛りから『浮く』能力。余りにも馬鹿げた、かけ離れた才能。それなのにサボる友人。
 それを聞いたとき、自分も渡ってみせると、未だただの人間なれど、手を届かせてやるのだと思った。
 そして、それは叶った。辿りつけたのだ。

 天に向けた掌。星を掴むと言わんばかりの手。
 そんな私の頭の近くで小町は屈む。
 その手に、小さな一輪の花を持って。

「映姫様の部屋にあった花さ。閻魔様の育てる花だ、何かの役に立つと思うよ。暇つぶしの礼さ」
「ありがとう、だぜ」
「疲れてるんだろ、強がなくていいさ。良ければ悔悟棒もあげようか? パシパシ叩かれるもんだから隙を見て持ってきちゃったよ」

 少し迷うが、そっちはいらないと首を振る。
 使う道も思いつかないし、生憎見つかって怒られるつもりはない。怒られるのは彼女の部下である小町に任せておこう。

「少し休みな。帰りは船に乗せてやる」
「渡っちゃったけど、死んでないわよね私」
「さあ、どうだろうね」

 笑う小町を呆れた目で見て、私は河の方を向く。
 立ち込めていた霧はもうない。遠くにある対岸が、確かに見える。
 小さな一歩。それでも確かな進み。

 満足を胸に、暫しの休みを取るため私は目を瞑った。



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