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東方小噺
目指せ魔法使いと死神娘
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ている。

「勝てりゃいいの教えてあげるよ。勝てればね」
「ほう、そう言われれば乗るしかないな。勝って根こそぎ奪わせて貰うぜ」

 私の言葉によしきたと小町は笑い、鎌から楷へと手を変える。
 そして船を漕ぎ、岸から離れていく。

「おい! ルール、は……え?」

 私の目の前、確かにあった幅の広い河は、いつの間にかほんの数メートルほどの小さな河になっていた。
 小町は十秒とかからずそれを渡り切り、対岸に降りてこちらを向く。

「最近は冥界の庭師やら船幽霊やら、用があるからと勝手に渡って困ってたんだよ。博麗の巫女もさぁ。ここはそんな軽いところじゃないのにねぇ」

 言い、小町は鎌を構える。くるりと手でそれを一回転。両手で柄を掴み逆さにし、刃の背を地に付ける。
 まるで、番人であるかのように。死神である象徴たる鎌を前に、魔理沙に向け立ち、にやりと笑う。

「ルールは簡単さ。この河を渡ってこっちに着いたらあんたの勝ち。来れなければあたいの勝ちさ。簡単だろ」
「そんなルールでいいのかしら?」
「ああ、いいさね。私の能力を忘れたわけじゃああるまいさ」

 ああ、と私は思い出す。彼女の能力を。
 それに気づいた彼女はにわりと笑い、トン、と軽く持ち上げた鎌で地を突く。

「要はあたいの能力とあんたの能力、どっちが上かの勝負さ。人間のくせに最速を自ら謳ってるんだろう? 渡ってみな。あんたみたいに前向きな人間には渡れない、三途の川をさ」

 小町の姿が、遠のく。余りにも急速に。
 河の幅が、広がる。僅かに出てきた霞で、向こう岸が微かに見えなくなるほどに。もはや「河」とさえ言えぬ程にまで。
 これが、小町の力。『距離を操る程度の能力』
 つまりこの勝負は、私が渡る速さが上か、小町の伸ばす力が先か。そういうことなのだろう。
 
 渡ってやろうじゃないか。手を伸ばし、その彼方を掴んでやろうじゃないか。
 勝負だと理解し、心が高まる。未踏の地を踏むように、その場所を自らの足で踏み入れるように。
 自らの力を示すために。届くのだと、分からせるために。
 箒にまたがり、炉をくべ魔力を込める。帽子を深く被り、その時に備える。
 合図はない。もう始まっているのだから。
 足が、地を離れる。『空』へと、浮かぶ。

 そうして私は、宙を走ったのだ。




 風が唸り声を上げる。掻き分けた風が水面に痕を刻み、速さ故に生まれた無風場が背後で爆ぜる。
 魔力で防壁を張っていなければ、人間では目も開けられない世界。私が入ることのできる世界。それを、ただただ真っ直ぐに、前だけを見て私は進む。
 それでも、まだ対岸には着かない。

 既に飛んでから十分は優に経った。普段とは違う全力での速さを考えれば、霧の湖でさ
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