第百二十五話 独眼龍の上洛その五
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「天下取りの為に」
「戦ならお任せ下さい」
今度は成実が口を大きく笑って政宗に言う。
「わしが思う存分暴れてみせます」
「うむ、戦なら御主じゃな」
「鉄砲を揃えてですな」
「そして馬に乗りじゃ」
そうしてだというのだ。
「敵陣を攻めよ、よいな」
「はい、ではその様に」
「馬と鉄砲は両方共強い」
政宗はこう言ったのだった。
「ならばその双方を一緒にすればどうか」
「それであれを考え出されたのですな」
「名付けて鉄砲騎馬隊じゃ」
鉄砲を撃つ騎馬隊、文字通りだった。
「あれに勝てる奴はおらぬわ」
「伊達の兵はまだ少ないです」
成実はこの現実を今言う、伊達家は東北の諸大名の中では最上や大崎、南部、蘆名と凌ぎ合っていてその中でなのだ。
「突出してはいません」
「一万動かせるかどうかじゃ」
つまり四十万石程である、それが今の伊達家だ。
「それではな」
「はい、然程です」
「この織田家はもとより」
今彼等がいる岐阜を拠点とするその織田家と比べるととてもだった。
「他の諸大名とも」
「武田、上杉とものう」
「北条や毛利とも」
「小さいわ」
こうした家は数万の兵を動かせる、武田や北条に至っては二百万石を超える。そうした家と比べればとてもなのだ。
「天下を狙うにはな」
「まずは東北の諸家を平らげ」
「そしてだからのう」
「その東北で勝ち進む為にもですな」
「あれが必要なのじゃ」
その鉄砲騎馬隊がだというのだ。
「圧倒的な力で勝ち進む為にはな」
「馬で一気に近付き鉄砲を撃つ」
「うむ」
「それからさらにですな」
「一旦駆け去り別の隊が撃ってもよい」
「車懸かりの陣で」
川中島で謙信が使った陣だ、それは鉄砲騎馬隊においても使える、しかもかなり友好にだというのだるである。
「それで、ですな」
「そういうことじゃ、よいな」
「若しくはそこから抜刀して突撃するもよし」
「鉄砲騎馬隊はただ鉄砲を持っているだけではない」
これが真骨頂だった、ただ撃つだけではないのだ。
「そこから突撃も出来る」
「足軽が鉄砲を持つのとは違い」
「それが出来るのじゃ」
このことが大きいというのだ。
「だからよいのじゃ」
「ですな、それでは」
「うむ、その鉄砲騎馬隊で」
政宗はその隻眼に不敵な笑みを浮かべて言った。
「わしは東北を手中に収めそれからじゃ」
「やがては」
「天下じゃ」
天、青いそこを見上げて言った。
「この天下を手中に収めるぞ」
「そうしましょうぞ」
「その通りじゃ、この岐阜もな」
「手中に収められますな」
「尾張の蛟龍か」
信長のことに他ならない、彼の名は米沢にもうつけ者から天下第一になった者として知られているのだ。
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