第百二十五話 独眼龍の上洛その四
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「まるで都の様に賑やかです」
「田畑もよいものです」
「織田信長の政は見事と聞いていましたが」
「噂以上でしたな」
「わしも負けんぞ」
政宗はここで不敵な笑みを浮かべて二人に話した。
「米沢をこの岐阜の様に賑やかにしてじゃ」
「いえ、殿それよりも」
片倉は自信を以て言う政宗にこう囁いた。
「殿は天下を望まれていますな」
「それならばじゃな」
「米沢も大事ですが座されるところは米沢よりもです」
「都の近くか」
「それか東国か」
片倉はここでこうも言った。
「そうした場所にです」
「東国、鎌倉幕府か」
「はい」
そこにだというのだ。
「そlこに座されるべきかと」
「東国もよいか」
「米沢では少し遠いです」
「都の近くだけかと思ったがな」
「それだけではありませぬ」
やはり東国のことを言う片倉だった。
「鎌倉幕府の例がありますから」
「東国でもよいのか」
「東国は開け水の便もよいです」
片倉が指摘するのはこのことだった。
「特に武蔵の辺りでしょうか」
「河越か」
「はい、あの辺りです」
まさにそこだった。
「具体的にあの地を調べてから城を築くべきですが」
「若しくは都の近くか」
「それなら幾つかあります」
「では奈良か」
政宗はかつて都だったこの地の名前を出した。
「あそこか」
「奈良もよいですがあそこは都でありましたから」
「また別か」
「それに奈良は遷都の理由になった寺社の多さがあります」
寺社があれこれと政に口を出して厄介な事情になりしかも彼等を抑えにくくなったからだ。それで今の都に遷都したのだ。
片倉もこのとを知っているので言うのだ。
「ですから」
「奈良はよくないか」
「はい、都自体に入るのも様々な存在の口出しを受けますので」
それもよくないというのだ。
「ですからここは」
「他か」
「はい、都や奈良とは別の場所です」
そうした場所にいるべきだというのだ。
「近江の南か摂津か」
「摂津か」
「あの地はよいと思います」
片倉が勧めるのはこの国だった。
「丁度石山の辺りが」
「本願寺か」
「そうです、あの地です」
そこだというのだ。
「あの地はよいと思います」
「左様か。近畿のことは暗いが」
「まずは岐阜、そして織田の領地を見回り」
「都にも入ってじゃな」
「織田の政とそれぞれの国自体も見ましょう」
「そうしてじゃな」
「はい、今後に備えましょうぞ」
こう言ったのである。
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