第百二十五話 独眼龍の上洛その三
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このことは元就にとって苦い記憶になっている、それで今も常に彼の菩提を弔う為に念仏を唱えている程だ。
「毛利家が家中の和に五月蝿いのはそれ故じゃ」
「傷ですか」
「心のな」
まさにそれだった。
「それになっておるのじゃ」
「ですか」
「武田はまだよかった」
信玄にしろそうしたことがあった。
「父君に嫌われ弟殿が可愛がられ主に立てられようとした」
「しかし信繁殿は見事でしたな」
柴田が唸るまでにだ、そこまでの者だったのだ。
「そのご父君ではなく信玄殿につかれましたから」
「信虎殿にとっては難儀じゃがな」
しかし自業自得、信長は言葉の外でこうも言った。
「じゃが武田家はましじゃった」
「ですな、信虎殿の追放だけで済んだのですから」
「何かと血生臭い御仁を追い出しただけだったので」
かえって武田にとってよいことだった、家中はまとまり主となった信玄は政でも戦でも万全の者だからだ。
「よかったですな」
「うむ、かえってよかった」
信長が見てもだった。
「あれはな」
「しかし伊達はですか」
「あの家は」
「そうはいっておらぬ」
織田や武田とは事情が違っているというのだ。
「このままいけばな」
「政宗殿がですか」
「弟殿を」
「そうなるやもな」
信長も暗い顔で言った。
「このままではな」
「ですか、危ういですか」
「伊達家は」
「そうじゃ。伊達はまだ一枚板ではない」
信長はまた言った。
「だから密かになのじゃ」
「そういう事情とは」
「伊達にも悩みがあるのですな」
「伊達とは縁がないにしても」
「厄介な話ですな」
「わしもそう思う。こうした話は好きではない」
過去のことからそうなっているのだ。
「難しいことにしてもな」
「ですな、戦国の世では」
「どうしても」
柴田達も信長のその言葉に頷く、五人共その顔ははっきりしない、その顔で一旦話を止めてだった。
城から密かに出てその上で町 に出た、そこでだった。
茶店に入った、滝川はすぐに手の者達と共に周りに潜み柴田達四人は信長の後ろにいた、そうして伊達を待つのだった。
その伊達政宗は今は岐阜の町中にいた、そこで左右にそれぞれ控える者達と共にいた、
一人はすらりとした中背の男だ、片倉小十郎である、その顔立ちは優しげなものだ。片倉は政宗から見て右手にいる。
左手にいるのは伊達成実がいる、彼は二人より背の高い逞しい男だ、顔立ちもしっかりとしている。この二人が政宗の左右にいる。
政宗は二人に対してこう言っていた。
「ここは凄いのう」
「はい、これまで入ったどの町よりも」
「賑やかですな」
「北条や武田の領地もよかった」
よく治められているというのだ。
「しかし織田はな」
「北条や
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