TURN71 ベルリンへその六
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「エイリス領を幾つも通過するなぞ」
「しかしアドルフ総統を救出して日本にご招待出来れば」
「確かに大きいです」
そのことは秋山もわかっていた。
「かなり、ですが」
「それでもですね」
「正直ベルリンまで辿り着けるとは思えません」
「いえ、長官なら必ずやってくれます」
「総統を救出出来るのですか」
「間違いなく」
日本妹は確かな顔と声で秋山に告げた。
「兄さんもいますから」
「祖国殿もおられることはわかっていますが」
「長官も兄さんも信頼しておられますね」
「無論です」
このことは確かだった。秋山にしても。
「そのことは」
「そしてお二人は確実に可能なことしかされませんから」
「大丈夫ですか」
「お待ちしましょう、今は」
日本妹は微笑んで秋山に話した。
「そうしましょう」
「それしかありませんか」
「今は」
秋山だけでなく平良も何とか納得した、日本妹はその二人にさらに言った。
「このことは極力秘密に、出来れば宇垣さんと山下さんと」
「私達にですね」
「後はアメリカさん、中国さん、フランスさんだけでしょうか」
国家にしても原始の八人のうちの三人だけだった。
「この方々に兄さんがいない間色々と頑張ってもらいましょう」
「ダグラス大統領と中帝国の新帝にもですね」
「限られた方々だけに、まだアステカ帝国との戦いは先ですし」
「長官達が帰られてすぐになるでしょうね」
平良は時間的なことをすぐに計算して述べた。
「それからですね」
「そうなりますね」
「今はまだ大丈夫ですか」
新たな戦いの前に海軍長官の不在は避けられるというのだ。
「ならいいですが」
「しかし。長官はいつもとはいえ」
秋山はまだ言う、胃の痛みを感じながら。
「何をされますかわかりません」
「そうですね。ですがそれが常に後になって正解だとわかります」
「あの方ならではありますが」
「ここはあの方の帰還を待ちましょう」
これが日本妹の今の言葉だった。
「そしてレーティア=アドルフ総統をお迎えする準備を」
「そうですね。しかし」
「しかし?」
「問題はあの方のお心です」
平良はレーティアのことを言うのだった。
「敗戦と挫折で虚脱状態に陥っていなければいいのですが」
「そのことですか」
「果たしてそのことは」
「わからないですね。ですがそれでも」
「総統が生きておられることがですね」
「まず大事ですから」
何事も命あってのこと、日本妹はこう平良に返した。
このことを話してそしてだった。
彼等は今は東郷の帰還を待つだけだった、それしか出来なかった。
エルミーが動かしているファルケーゼはエイリス領に入っていた、スエズは確かに多くの艦艇が集結している、だがだった。
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