第百二十三話 二人を狙っているのは誰だ?
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…」
ブシュッ!
瞬間、体に自由が戻った。
何が起こったのかと思い、目の前を見ると、そこにはヤーヴァスの背中があった。
さっきまでヤーヴァスとは背中合わせになっていたはずだった。
それがどうして目の前にいるのか分からなかった。
するとまた触手が伸びてくる。
それをヤーヴァスは剣で斬り落とす。
それを見てようやく理解する。
どうやら自分に絡みついた触手を彼が斬ったお蔭で、体が自由になったようだ。
だが不思議でならなかった。
彼がこんなことをする理由が思いつかないからだ。
「ど……どうして……」
これでは、まるで自分を守っているみたいではないか。
またも触手が二人を狙って伸びてくる。
今度は複数だ。
だがさすがはヤーヴァス、向ってくる触手を難なく斬り落としていく。
すると攻撃が止み、静けさが辺りを支配する。
(もう終わりか……?)
ヤーヴァスは警戒を緩めずに周囲を観察する。
すると、目の前から何かが向かってくる足音が聞こえる。
それも固い地面を歩くような音では無く、まるで泥の上を歩くような粘々(ねばねば)した音が聞こえてくる。
だがもちろん、この周囲には水溜りも無ければ泥も無い。
それなのにビチャビチャと耳に届いてくる音が不快感を与える。
(何だ……この嫌な感じは……?)
メイムが感じた感覚と同じような思いをヤーヴァスも抱く。
目の前から視線を外したいと思うが、どうしても外せない。
外した瞬間、後悔してしまうような感じがする。
その上、生温かいゼリー状の物体を頭から被(かぶ)ったような感覚が伝わってくる。
そして、二人はそこに現れたモノに息を飲む。
「ほう、あのヤーヴァスと女性は闘っていたわけではなかったのですかね……」
先程までヤーヴァスとメイムが争っていたところを観察していた人物が首を傾げる。
争っていたはずなのに、今はそんな彼女をヤーヴァスは庇っている。
「一体どういうことでしょうか……?」
しばらく考えていたが、二人の関係が分からないので答えを導き出せない。
だがそこで何かを思いつき、狡猾(こうかつ)そうに口角(こうかく)を上げる。
「これはこれで、都合が良いですかねぇ」
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