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トーゴの異世界無双
第百二十二話 メイム……何でだ……?
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「惚けても無駄って言わなかった?」


 ヤーヴァスは目の前の少女を観察する。
 どうやらこちらの言うことに耳を傾ける冷静さを感じない。
 先程から激しい殺気が漂ってきている。
 今にも襲い掛かって来るかもしれないと警戒させられた。


「……村とは?」


 それでも何とか事情を聞き出そうとする。
 話して落ち着かせることができるかもしれないとも思った。
 するとメイムはフッと鼻で笑うような仕草を見せる。


「そうよね。私の村なんか、アンタが滅ぼした幾つもの村の、ほんの一つしか過ぎないもんね?」
「……」


 しばらく沈黙が流れる。
 そして、その沈黙が苦痛かのように顔を歪めて、メイムは呟く。


「……リコール村」
「……ん? ……リコール?」


 聞き返した瞬間、メイムが何かを投げつけてきた。
 ヤーヴァスは咄嗟(とっさ)に横に跳び避ける。
 投げたのはナイフのようだ。
 ナイフはそのまま地面に突き刺さる。
 攻撃をされたことで、ヤーヴァスの警戒心は最大になる。
 即座に剣に手を掛けるが、メイムの様子を見て目を細めてしまう。


「名前すら聞き返すほど覚えてないってわけなんだ……」
「……」
「こんな奴に……こんな奴に……」


 彼女の体が小刻みに震えていく。
 その震えには、間違いなく憤怒(ふんぬ)が込められている。
 そしてキッと顔を上げて睨みつける。


「アンタが!」
「……」
「アンタが私の村をっ! 母さんをっ! 父さんをっ! ネムを殺したぁっ!」


 メイムはそのまま突撃するようにヤーヴァスに向かう。
 剣を抜いて斬りつける。
 ヤーヴァスも同じように対応する。


 カキンッ!


 両者の剣が合わさり火花が散る。





「おやおや、これは面白いことになっているようですね」


 メイムとヤーヴァスの小競(こぜ)り合いを見ていた者がいた。
 その者は、二人に気づかれないように、物陰に身を隠している。


「奴を仕留めるには骨が折れるかと思いましたが……ふむ、この状況、上手く利用させて頂きましょうか」


 闇の中に微かに笑い声が響く。



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