第参話 《第一層ボス攻略戦》〜前編〜
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。何故なら、一度ダガーをスッポ抜けさせて空中で逆手から順手へとダガーの持ち方を変えた上でチルノの顔面を狙ったのだから。
「褒めてくれてるの?」
「呆れてるんだよっ!」
そう言い切ってシキは再び疾駆し、ものの数秒でチルノの懐へと潜り込み今度はダガーを横へと一閃する。
対するチルノは上段に構えていた大剣を振り下ろす。
直撃を避けるため身を捻った状態でのシキの一閃はチルノの腹を小さく切ったがHPバーを数ドット減らしただけだった。
が、チルノの大剣は掠っただけにしても威力が違う。掠っただけでHPバーの一割を持っていかれた。
それは単純に威力の差だけではなく、シキが機動力を優先した布装備に対しチルノが防御力を優先させた軽鎧であるところも大きい。
「はっ……!」
それを確認して鼻で笑ったシキに対し、氷のような冷たい表情のままのチルノ。
シキは一度バックステップして距離を離して態勢を立て直そうとしたが、着地点には姿勢を低く沈めて砲弾のような速度でチルノが向かってきていた。
「まず……っ!」
まずい、そう思った時にはもう遅かった。
彼女の両手剣が淡い赤色の光を帯び、シキの腹を横薙ぎに一閃した。力任せに両手剣で薙ぎ払う両手剣用ソードスキル《ハードスラッシュ》。
ソードスキルを受けゴロゴロと転がっていくシキとそれを見ているだけで追撃しないチルノ。
《ハードスラッシュ》によってシキのHPバーは七割を切り、デュエルの終結まで残りは二割。
しかし、チルノはほぼ無傷ときている。
「だけど、こんな状況でも諦められないあたり……俺も負けず嫌いだな」
小さく笑って、シキは立ち上がる。
「……シキ、貴方ってこの程度だったの?」
「いいや。本気じゃないだけだ」
おどけて笑ってから、軽く地面を蹴る。
「行くぞ。俺から目を離すなよ?」
そんな声が聞こえたのは、チルノの耳元からだった。
トン、と背後で靴が地面を蹴る音が聞こえ、チルノのHPバーががくり、と小さく減った。
振り向くが、シキはいない。
「おいおい、どこ見てるんだ?」
また耳元で、声。
驚愕に支配された思考回路では正常な判断などできるはずもなく、じわりじわりとHPバーが失われていく。
そして、それがいきなりそれが止まった。
「…………?」
疑問を抱いた直後、視界の端で紫のメッセージが輝いていることに気がついた。
「勝負ならとっくに終わってたぞ? お姫様?」
少し離れた場所からにやにや顔で楽しげにこちらを見ているのは、彼女を負かした黒衣の少年――シキだった。
「どう、やったの?」
簡単なことだ。とシキは微笑む。
「俺の考えでは、単発の一撃が俺より圧倒的に上回るチルノを倒すための方法が一つだけあった。それにはまず、お前を油断させなければならなかった。だから――」
「わざと、
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