弐之半 《女王》
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ガーで線を切り裂く。たったこれだけの動作で、全てを殺してしまえる。それがたとえフィールドに存在するボス級のモンスターであろうとも、試したことは無いが、プレイヤーでもNPCであろうとも、不死属性を持つ建築物であろうともだ。
「シキ?」
いつの間にか足が止まってしまっていたようで、隣には先程まで少し後ろを歩いていたはずのシンがいた。
「あ、いや、何でもない」
ゆるゆると首を振って思考を入れ替える。今優先すべきことを頭の中に再入力する。息を吸って、吐く。
軽く何度か頬をぺしぺしと叩いて、薄い微笑を浮かせる。
「……よし、行くか」
一行は再び暗い森の中を慎重に歩みを進める。
○●◎
所変わって、ある真っ白い部屋の中。
二人の男女が向い合って椅子に座っていた。
二つの椅子の間には小さな机。机上にはチェス盤。
一人はソファーにちょこんと腰掛けた青髪に血のように赤いワンピースを着た少女。そしてもう一人の男は無骨な木の椅子に座った白衣に黒髪、何を考えているか解らない無表情をしていた。
「……いいの?」
青髪の少女が向かい合う白衣の男に問う。
「何がかな?」
静かな声で白衣の男は返答する。
「……言わなくてもわかるでしょう」
呆れた風な少女の声音が、彼の笑いを誘った。
「私にも解らないことぐらい有るさ。ただまぁ、今回に限って言うなら……順調にいっているのではないかな」
「……貴方の目からはそう映るの。私はどうもスローペースにしか思えないのだけれど。――――王手」
少女が盤上の騎士を操作し、王様へと向かわせる。
男はふむ、と少し考える素振りを見せ、騎士を城塞の手で打ち倒す。
「決してスローペースではないさ。むしろいいペースだと思うよ」
そうかな、と少女は首を捻る。
「異分子は排除すべきではないかしら?」
「違うよ。異分子は利用するべきだ。そして、彼らは異分子ではないよ」
違うの? と少女は首を傾げる。
違うんだよ、と男は頷く。
「彼らは意図的に創りだされた者ではないが、それでも《弾かれ者》であることに絶望などしていない。そして――――王手詰みだ」
げ、と少女は盤面を確認する。
少女の白い王様の周囲には、男の指揮する黒い女王と騎士が二体、更に僧侶が奥に待機していた。
むむむ、としばし唸った後、打開策が発見できずうなだれた。
「………降参よ……」
その時、男が頬に微かな笑みを滲ませた。
「……? どうかしたの?」
「いや、その《弾かれ者》の一人が覚醒の兆しがあるようだからつい、ね」
男が軽く手を振ると、彼らの周囲に数々の映像が展開した。
「……貴方が見積もった時間より、
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