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東方守勢録
第七話
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える。重い一撃が駆け抜けたあと、俊司は思いっきり吹き飛ばされていった。


「がはっ……」

「君のスペルカードは一度発動してしまえば、それ以上身体能力を上げることはできない」

「うぐっ……」

「先を見据えない判断が……勝負を左右するんだよ」

「がっ……う……あ……」


クルトは俊司の首をつかむと、握り締めながら持ち上げていく。


「さて、そろそろ終わりにしようか」

「ぐ……が……」


息ができず声を発することもできない。非常に危険な状態だった。

だが、俊司には秘策があることを彼は忘れていた。


「……?」


首を絞められていたはずの俊司は、なぜか笑みを浮かべていた。だが、この状況を見ても抜け出せるすべはないはず。

そう思っていたときだった。


「ぐっ!?」


いきなり右腕に激痛が走る。同時に手から力が抜け、俊司は拘束から開放されていった。


(なぜ……!)


俊司の右手には、銃ではなくナイフが握られていた。それに、ナイフには赤い血液が塗られている。

それを見た瞬間、クルトは忘れていたあのことを思い出してた。


「そうか……俺としたことが、君の能力の事をすっかり忘れていたな」

「発動するかどうかは微妙だったけどな」


俊司の能力『危機を回避する程度の能力』が、偶然にも発動していたのだ。

首をつかむだけでは詰みにはならない。クルトの表情にも焦りの色が見え始めていた。


(これでは止めをさせないな……どうしたものか……)

(あぶねぇ……能力発動してなかったら確実に死んでな。慎重にいかないと)


あたりに流れる緊張感が、少しずつ大きくなっていった。


「さてと……そろそろ本気で決着つけるか?」

「奇遇だな。俺も同じことを考えてたんだ」


俊司はそう言うと再びハンドガンを取り出した。


「じゃあ、さっそく」

「その前に一ついいか?」

「? いいよ?」


不思議そうにするクルトに、俊司は睨んだまま話を続けた。


「なぜお前は、そんなに軍に忠実でいられるんだ?」

「……どうなんだろうね? 昔の僕なら……こんなにはなってないだろうな」

「どういうことだ?」

「……ただの昔話」


そう言ったクルトは、なぜか懐かしそうにしながらも悲しそうな顔をしていた。


「ある人に言われたんだ。組織と言うのはつながりがなければ強くはならないって」

「……」

「昔の僕は一人を好んでいてさ、人とのかかわりなんていらないものだと思っていたさ。でもね……その人はそんな僕をいつも叱ってきてね、あれはうざかったな〜」

「…
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