間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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ながら逃げてゆく猪人たちの背中を見送りながら、カリーナはふーっとため息をついてその場にへたり込んだ。
なにげに、一人で魔物を撃退したのは始めてである。
――なんとかなるものだね。
まさか、未だに勇者になりきれない自分にこんなことが出来るとは思ってもみなかった。
でも、嬉しいような、悲しいような。
カリーナはどちらかといえば勇者などになりたくはなかった。
だが、火神"太陽の嗣子"の祝福を受けたことを知った周囲の人間が、彼女に勇者という立場を強いたのである。
間違っても火神"太陽の嗣子"はこんなことのために力を与えてくれたわけではないのに。
それは家を暖める豊穣の力。 夜の闇と野獣を退け、安心を与える聖なる力。
ただ、私を慈しみ、見守ってくれているだけの優しい力だったはずなのに。
……チチチッ
ふと聞こえてきた声に顔を上げると、そこには何匹もの栗鼠がこちらをそっと伺っていた。
いや、あれは栗鼠ではないだろう。
その目に宿る知性の光が違いすぎた。
「……よかったね、食べられなくて」
笑いながら手を振ると、栗鼠はびっくりしたように体を引っ込めてどこかへ逃げていってしまった。
あ……今、私笑ってる?
それは、ついぞ久しく覚えたことの無い感情だった。
そうか、私はやはり勇者などではない。
私がなるべきは勇者ではなかったんだ。
カリーナはまるで夢から覚めたように目を見開いた。
カリーナは思う。
もしかしたら、自分は昔のただの少女には戻れないのかもしれない。
だが、自分はもっと別のモノに変われるのではないだろうか?
そもそも、昔の自分は自分の理想だったのか?
今ならばはっきり"否"と言える。
自分のなりたい自分、それはきっと勇者とは別の形で人々を救う者。
押し付けられた勇気などではなく、自分の中から湧き上がる勇気を基に行動にするなら、それはもっと違う名前で呼ばれることだろう。
命を産みだし、その命を守り、育もうとする者。
その存在の名は、きっと――
*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*
帰宅したカリーナを待っていたのは、不機嫌な表情のクリストハルトだった。
「ただいま」
「……」
「おこってる?」
「……怒ってない。 というか、キシリアに怒るなといわれた。 『お前がいつも横にいることで彼女の成長の邪魔になってないか?』ってな。 感情的には納得できないが、悔しい事に心当たりは山のようにある」
だが……
それでも彼はカリーナに頼りにされたかったのだろう。
「ねぇ、ハルト」
「……なんだ?」
仏頂面
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