間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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ついで最下位に位置する存在だ。
もしも魔界の住人ならば、彼女等が猪人に襲われていたとしてもまったく気にも留めないだろう。
むしろ自分も晩御飯用に捕獲するかといった感覚だ。
――だが、カリーナは違った。
「……やめなさいっ!」
口にしてから自分で驚く。
馬鹿なことをしでかした事。
そして、自分がこんな大きな声を出せることに。
「……なんだ? ほおぉぉぉぉ人間のメスじゃねぇか!」
だが、そこまでだった。
猪人の注意を引くことは出来たものの、彼女が何かできるというわけではない。
火神の加護を受け、炎を自在に操ることが出来るとはいえ、それを自分の意志で攻撃に使うという事を彼女は未だに出来ないでいた。
火の加護を攻撃に用いようとするたびに、生まれて初めて魔物を火で焼いたときの光景を思い出す。
皮膚が火傷で崩れ、苦悶と呪いの言葉を吐きながら死んでいったあの光景がどうしても脳裏から離れない。
今思い出すだけでも、胃の中に酸っぱいものがこみ上げてくるぐらいだ。
それゆえに、今までは"支配の経絡"と呼ばれる魔道具を用いてクリストハルトに攻撃の全てをゆだねていたのだが……。
そう、彼女は未だ真に勇者とは成り得ておらず、彼女の中は未だにただの少女の部分を色濃く残しているのだ。
ただの少女では猪人と戦うことは出来ない。
「おい、みんな出て来い! 人間のメスが出てきたぞ!!」
喜色に満ちた猪人の声が森の奥に向けられると、それに応えるようにして、潅木を踏み分ける音がいくつもこちらに近づいてくる。
――そういえば、猪人は元々群れる生き物だった。
刻々と悪化する状況に、カリーナの頬を冷たい汗が滴り落ちる。
「おお、本当にメスだ!」
「ラッキーじゃねぇか! こいつは食べる前に孕ませてからだな……」
「俺が一番最初だ!!」
「あぁん? 見つけたのは俺だぞ! 勝手言ってんじゃねぇぞ!!」
「それよりも、逃げられないようにさっさと囲みこめ! 逃がしたらテメェの中身の足りない頭を消し飛ばすぞ!!」
現れた猪人は全部で5人。
全員が屈強な戦士らしく、肩や胸は大きく盛り上がり、筋肉太りした腹はクッキリ6つに割れていた。
その太い足はカリーナが逃げるよりも早く森を駆け巡るだろう。
「……今、助ける」
カリーナが視線で合図を送ると、獣妖はしばし逡巡した後に小さく頷いた。
同時にカリーナは火神の加護を僅かに放って猪人の足元を軽く燃やす。
「おわっちゃあぁ!?」
驚いた拍子に獣妖を掴む指が外れ、その僅かな隙をついて|
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