間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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たどりつつ一人呟く。
正直、向こうから声をかけてもらえなかったらいつまでもじっと農作業を見つめていたかも知れない程度には会話が苦手なカリーナだ。
実際にはただのお使いにも関わらず、相当緊張していたのだが……こうも順調だと、かえって心配になってしまう。
そして、事実、トラブルは一番最後に待ち構えていた。
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「お願い! やめて!! 助けて!!」
森に入って5分ぐらいだろうか?
聞こえてきたのは、まるで栗鼠が鳴くようなか細い悲鳴だった。
カリーナはほぼ反射的に息を潜め、自分の存在が周囲に溶け込むイメージと脳裏に描く。
そして慌てずに足を忍ばせて声のする方向へと向かった。
――臭い。
声の主が近づくにつれ、カリーナの鼻を獣の臭いがかすめる。
店によく来る蟹漁師の人狼や近所に住んでいる医熊人とも違う匂い。
たしかこの匂いは……記憶が間違っていなければおそらく猪人。
――厄介な。
カリーナは細い眉を顰めて一人呟いた。
猪人は森と草原のどちらにも住む亜人で、獣人に似ているがまったく進化の過程が違う存在らしい。
ちなみに猪の獣人は"猪神人"という別の種族がおり、猪人と混同すると烈火のごとく怒り出すために注意が必要だ。
街に住むこともあるらしいが、なぜか街に住むと非常に不潔な存在となり、疫病の発生源になることも多いため差別を受けることが多い。
繁殖力が非常に高く、人獅子や虎人たちの主食でもある。
性格は粗暴で衝動的。
獣相を持つだけあって腕力はかなり強い部類に入る。
むろんそれは一般論であり、店に来る穏やかで礼儀正しい猪人をカリーナは何人も知っていた。
ただ、ここにいるのはそんな礼儀正しい猪人ではないだろう。
紳士的な彼等はこことは反対側の湿気の多い森でキノコ狩りを生業にしているためか、その匂いには複雑なキノコの芳香が混じるのだから。
おそらくは噂になっている盗賊。
幸いこちらが風下であるため、彼等の鋭敏に嗅覚に引っかかってはいないようだ。
風の流れに注意を払いながら足を進め、そしてようやく悲鳴の主を確認する。
少女? いや、違う……あれは――獣妖?
獣妖は森の妖精の一種で、森の動物に化ける理力を持つ、どちらかといえば力の弱い妖精達である。
熊にでも化ければ人間の相手ぐらいならできるのだが、猪人相手では明らかに力不足。
その非力さもあって、森の食物連鎖では植物に
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