間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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彼女はリスクを承知で一人で森へ入る事にした。
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見渡す限り緑の恵みが大地を覆い、その上を色とりどりの花と蝶が舞い飛ぶ。
豊穣の恵みを体現するかのようなその畑は、樫の森を抜けた先に広がっていた。
いや、畑と言う表現は正しくは無い。
正しくは薬草園。
ここは医術や薬学を得意とする医熊人たちが、自らの薬の材料を育てるための場所だった。
キシリアは、ドライアドに品種改良をしてもらった作物の種を、この場所で一部栽培してもらっているのだ。
もっさりとした毛に覆われた大柄な医熊人たちが農作物を育てる姿はどこかユーモラスではあるが、その外見から彼等を侮ってはいけない。
ここにこんな長閑な場所が存在するのも、彼等医熊人が戦闘力に長けた一族であるからに他ならないのだから。
今も彼等の庇護の元、野の妖精であるポレヴィークやポールドニツツァが、 純白の衣を翻しつつ所狭しと薬草の世話を行っているのが見える。
そう、見た目だけならば本当に長閑な光景なのだ。
「ゴァ? お嬢ちゃん、どっから来たゴァ?」
景色の美しさにあてられてぼーっとしていると、不振に思ったのか近くで作業をしていた医熊人の一人がいぶかしげに話しかけてきた。
声と服装からすると女性のようだが、彼女たちを見た目で判断することは難しい。
「……すいません。 キシリアさんに言われて薬草を取りに来たんですけど」
これ、お土産です。
そういってカリーナが差し出したのは、樹麗人と共生している蜂人の作り出した特製の蜂蜜。
見た目どおり、医熊人達はこの蜂蜜がことのほか大好きなのだ。
ヘタに少量の蜂蜜を持ち込んだ結果、奪い合いの喧嘩が始まってしまう程度には。
「おぉ、おぉ、これはありがたい。 キシリアちゃんのお使いね。 じゃあ、キシリアちゃんのスペースに案内するから、ついてきなさい」
後ろをついて歩くと、そこには完全に季節を無視した植物がその生長を競い合っていた。
おそらく妖精達の理力による奇跡だろう。
彼等の主である医熊人達の能力は薬品生成であり、植物を育てる力は持ち合わせていないのだから。
だが、基本的にキシリアはその季節にあったものしか収穫しない。
なんでも、その季節に要求される栄養が、その季節の作物に備わっているからなのだそうだ。
ちなみに今回の羽衣甘藍は本来夏の野菜であり、彼女からするとずいぶん珍しい注文をしたものである。
ま
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