間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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、その辺にいるゴブリン達を襲って食べることがよくあるのだとか。
……まぁ、その理由の大半が、『キシリアの店で弁当を買い損ねたから』というのは、ここだけの話である。
ちなみに、絶対に食べないのは自らが友として認めた相手と家族のみ。
この禁忌を犯した者については、罰するための明確な法こそ無いが、社会的に致命的なダメージを受けてしまうため、下手な死罪より過酷な結果が待ち受けている。
つまり何が言いたいのかと言うと、魔界の法とは力と信頼のみ。
そしてこの世界で信じていいのは友人と家族だけという事実。
一人でホイホイ外に出て魔物に襲われ、彼等の昼食になったとしても誰も文句をいう事は出来ない……襲われて死ぬほうが悪いのだ。
さて、そんな事情もあるので、森に入るなら誰か一緒に来てくれると嬉しいのだが……
カリーナは家族として共に生活している面々の顔を思い浮かべる。
まず、ケットシー達は無理だ。
最近リージェン三兄弟はそれぞれシフトを作って24時間体制で働いている。
今はちょうど起き出したマルが、夜明け間際に仕入れ業者から荷物を受け取ったテリアと業務の引継ぎをしているところだろう。
そして、いつも護衛を頼んでいるクリストハルトは家にいない。
……ちょうど朝の鍛錬で知り合いの獣人たちと汗を流している頃だ。
最後にこの魔界で弁護士をしているというマンティコア、フェリクシア嬢はというと……そういえばまた数日前から姿を見ていない。
まぁ、彼女の場合は家にいるほうが珍しいのだが。
――困ったな。
この僻地では頼れる近所の住人などいるはずもなく、かと言って自分ひとりでは戦うことなど出来ないだろう。
実はカリーナは血なまぐさい戦闘をするのが苦手だった。
というか、ほぼやったことが無い。
ただ横で見ているだけならば良いが、自分の意志で命を奪うことに強い忌避感があるためだ。
この感覚だけは、勇者として各地を回ってもまったく変わることはない。
殺すことが怖くて仕方が無いのだ。
誰かに無理やりやれと言われたら……きっと恐怖から加護を暴走させ、このあたりの森を全て灰にしてしまうだろう。
カリーナの操る炎にはそれ自体に意志があり、カリーナを怯えさせる存在を全て灰にしようとするからだ。
別に森を迂回すれば強盗にも遭わずに済むのだが、今度は崖などが邪魔であるために倍以上の時間がかかってしまう。
そんなに時間をかけてしまうと、今度は朝の売り出しに間に合わない。
無理だといって断るか?
いや、それは出来ない。
これ以上役立たずな自分を晒して平気であるほど、カリーナは図太い神経はしていなかった。
故に選択はただ一つ。
――運を天に任せるか。
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