間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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のままカリーナの荷物を奪い取ると、彼は出来るだけ目を合わせないように半歩前を歩き出した。
おそらく拗ねているのだろう。
長い付き合いの中で、カリーナはそんな些細な癖すらもわかるようになった自分が少し誇らしかった。
そんな彼に、カリーナは告げる。
「私、赤ちゃんほしいな」
その瞬間、クリストハルトの手から荷物が落ちた。
「お、お、お前、な、何を」
思わず振り返り、目を見開いて慌てふためくクリストハルト。
そんな彼に、カリーナはさらに悪戯な笑顔を浮かべてこう告げた。
「……そのうちね」
「あ、あのなぁ」
変なことを言うと本気にするぞ?
カリーナが笑っていることに気づき、クリストハルトはため息をつきながら微笑む。
思えば、彼と出会ってから、カリーナがこんな風に笑うなど初めてのことである。
ふと、クリストハルトの目が潤んでいることに気づいたが、カリーナはあえて口にしない事にした。
どうやら思っていた以上に自分は彼に重荷を担がせていたらしい。
「さ、はやく朝ごはん作るよ。 時間がかかったから私もお腹がすいた」
私は朝は四足で、昼は二本足、そして黄昏には三本の足で歩く者。
そう、私は人。
人は流れるときの中でけっして同じ姿や心ではいられない。
夜明けの光が毎日同じようにやってきたとしても、照らす世界が日々同じものではないように。
「ん? 何だ?」
気がつくと、玄関に何か小石のようなモノが山盛りになっている。
先を歩いていたクリストハルトが素早く駆け寄り、その謎の物質を調べ上げ、怪訝な顔をしたままカリーナに一枚の封筒を差し出した。
「なんか解らんが、たくさんの木の実とお前への手紙だ」
カリーナもまた首をかしげながら手紙を受け取り、そっとその封を開く。
そこには、たった一言、妖精達の使う文字が記されていた。
だが、そのたった一言の言葉が、カリーナの胸に温もりとなって大きく広がる。
なんて素敵な言葉。
それは、まるでスクマ・ウィキのように日々を生きるための大切な糧。
カリーナは知らずに自分の手が祈りの形をとっていることに気づいた。
そしてそっと、そこに記されていた言葉呟く。
「……ありがとう」
めまぐるしく変わる世界に、自らに成長という祝福を与えてくれるこの世界に心からの感謝をこめて。
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