第三章
そして彼の矯正が始まる。
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…俺の曖昧な記憶からすると、連れていかれるのは自販機の前。
『はぁはぁ、見ず知らずなのに悪いな。……と、これ』
ゴトン、と音がした先には缶コーヒーがあった。それを手渡してくる。
この時はまだ百円だったコーヒーだ。
「ありがとう」
『いや、駆け寄ってきてくれて助かった、から。……まあ、その親切心に対してだな』
「ははっ、僕のことも助けてくれよ」
『……?』
俺の突然の頼みに彼は不思議そうな、怪訝な顔をすると振り返り、最後に呟いた。
『いろいろあるみたいだが、一人で頑張れよ。……俺も孤独であり続けるから』
「ああ、その代わり……」
もう夢から覚めてしまったように「彼」の姿は見えない。……どんどんと白いモヤが広がっていき、目の前が真っ白になった。
おかげで「僕もいつか助けてくれるかい?」と言いそびれた。それと、過去に言った言葉も。
「はっ、俺も孤独であり続けるから、かぁ……。カッコいいな、俺もあんな風になれるのかな……」
――現実の朝の光を感じる。
そして俺が最後に見たのは、白く煤けた千葉の町並みに浮かぶ場違いな桐の山だった。
× × ×
眩しい。目を覚ました直後、そう感じた。
懐かしい思い出だった。……ただ、唯一引っ掛かるのは最後に見えた桐の山。どこかで見たような風景だったが、窓から外を見てみても、それっぽいものは見当たらない。……ま、それが夢ってモノなのかもしれないが。
下から声がする、どうやら両親も帰ってきたようだ。……二人で朝の家族団らんを楽しく過ごしているのだろう。非常に気にくわない。超どうでもいい。
俺は、まるで思い出を蹴り飛ばすように、床に転がっている緑色のボールを蹴っ飛ばした。良い気味だ、とてもくだらない。ちなみに結構かたい。
ああ、足が! 痛い痛い! 痛くてしっかりとした達筆で遺書を書き残したあと窓から飛び降りて死ぬ! けど足の指が痛いのも窓から落ちて死ぬことも等しくどうでもいい。
ああ超どうでもいい。ホントどうでもいぃ……。あぁ、誰か慰めてくれないかな。
痛い足をどうどうと地面につけて格好つけて、まるで痛みなんか気にしてない、感じてない風に装い、どうどうと登校することにした。……まあ、強がっても誰も見てないんだけどね。
× × ×
奉仕部の活動は言うまでもなく生徒のなんでも相談室だ。生徒の相談を受け、迅速に問題解決、しかし以前から存在していたらしいが、その存在は別段 公にはされていない。
由比ヶ浜さん曰く、平塚先生がその伝手となるようだ。
俺も問題ある人間の一人とし
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