ALO編
episode6 会議の席、勇者の底力2
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できる程になっていた。
その数、五十を優に超えるだろう。こちらも相当に精鋭だろうが、それを加味したところで戦力差は圧倒的。向かってくる連中のスピードを目算で図って考えるに、今から全力で随意飛行で逃走を試みたところで……逃げ切ることは、恐らく不可能。
それが分かったのだろう、参加者の数人が絶望的な呻きを挙げる。
(……せめて、領主連中だけでも……)
逃がさなければ。
俺が咄嗟にそう考えて、あらかたのアイテムを渡してきてしまったストレージを開く。どうする。遠距離攻撃用投擲武器、目晦まし、陽動、一通りのアイテムは揃っているが、「一発ぶちかまして50人を撃退!」なんてアイテムは無い。あるわけがない。かといって、あの大群相手にガチンコ戦闘して張り合えるほどの力が俺にあるわけでもない。
手詰まり。
どうしようもない、『詰み』。
(くっそ、っ!?)
詰んだ。
その、俺が諦めた、その瞬間。
(……? ……なんだ?)
直後、なおも続く《索敵》と俺の鍛えられた聴覚が、もう一つの羽音を捕えた。
◆
サラマンダーの無数の羽音に紛れた、一際強い弦楽器のような高音は確か、シルフのもの。もう一つ、管楽器に似た響きは、スプリガンのそれだったはず。これだけの激しく音高く鳴る羽音、『随意飛行』の更に限界に近いレベルの速度だろう。
「くそっ、何処から情報が……!?」
「りょ、領主様だけでも、何とかっ」
そんな音には気付けない皆が、強張った顔でサラマンダーの大群を睨みつける中で。
(……来る!)
その響きが、近づいて。
一人の妖精の黒い影が、近づいて。
「っ!!?」
巨大な爆音と共に地面に衝突し、派手に土煙を上げた。
「双方、剣を引け!!!」
同時に聞こえる、バカでかい声。
聞き覚えのない、けれども懐かしく耳に……いや、魂に響く、声。
この世界ではSAOの世界とは違って、声は向こうの世界の自分と一致するものではないし、プーカに至っては歌うために設定で弄ることさえできる。そりゃそうだ、こっちの世界の外見とあっちの世界の外見が一致するとは限らないしな。俺の声だって、誠に遺憾なことにこっちの世界の姿形に非常にマッチしたそれに変化させられている。
だから、この声は、聞き覚えは無い。
聞き覚えは無い、はずなのに。
俺はそれが、誰の声か、確信を持って断言できた。
誰にも聞こえない、小さな声で呟く、その名は。
「…キリト…!」
懐かしい、『勇者』の名だった。
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