亡命者は姫提督
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どうも彼が馬鹿でないと評価を上方修正しながら、ヤンはカストロプ令嬢との謁見前の打ち合わせを行う。
既に、これまでの会話で舌戦による砲火は烈しく交わされているのだった。
「確認したいのですが、この船団の最上位者はカストロプ令嬢でよろしいので?」
ヤンが序盤の焦点となっているカストロプ令嬢の身分について尋ねる。
彼女が『軍人』としてなのか、『貴族』としてなのか、あるいは両方なのかで扱いが大きく変わるからだ。
それを分かっているからこそ、ベンドリング中佐は徹底的にその位置づけをごまかす。
「この船団はエリザベート様の物でございます」
今までの会話の中で、彼が船団の『運営』をしていると言ってカストロプ令嬢の意思を明らかにしていない。
これでカストロプ令嬢に会えなかったら彼女は既に死んでいて、実際はベンドリング中佐が死んでいる彼女の命に従っているふりなんて事態も考えられるからだ。
なお、カストロプ令嬢が『貴族』としての立場で来るのならば、その建国の歴史から同盟での立ち振る舞いはかなり厄介になる。
後腐れを考えなくていいのならば、『軍人』としての亡命をして欲しい所なのだが、長く財務尚書を務めていたカストロプ家の権勢は同盟にも伝えられており、フェザーンにあると噂されている隠し財産などを主張するならば彼女はいやでも『貴族』の立場を崩せない。
(なるほど。船団を手放さない理由がこれか。
銀河帝国の予算を長年掠め取っていたのが本当ならば、その隠し財産は星系政府数年分に匹敵するだろう。
それを主張するために彼女は貴族でなければならず、それに伴ういろいろな厄介事から身を守る為なんだろうな)
「では、カストロプ令嬢にお会いしたいのですがよろしいですか?」
「もちろん。
その為に来ていただいたのですから」
ヤンの言葉にベンドリング中佐は重厚な部屋の前で立ち止まり、緑髪のメイドがそのドアを開けた。
「ようこそ。
歓迎しますわ」
豪華絢爛なドレスに身を包んだまさにお姫様がヤンを出迎えたのだった。
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