16 「双牙携えし竜は白き幻に見ゆ」
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と、血糊が頬に飛び散った。手のひらで拭う。
その時、太陽が陰った。
ギエエエアアアアアア!!!!!
ナギの顔に浮かんでいた笑みが、明るくなった。無意識に詰めていた息を、ほっと吐き出す。ルイーズの歓声も聞こえた。
「デュラク!」
飛来した黒き死神は着地にすると同時にその刃翼で飛びかかり、捕食者の登場に怯んでいたファンゴ達をひとっ飛びで6頭上下に分断した。赤く染まる艶やかな黒毛。
数で攻めようと群がる猪を、尻尾回転で360°一掃し、もつれ倒れた猪をナギが始末していく。
そこからはあっという間だった。
30頭弱をもともとナギが片付けていたのもあり、デュラクが現れて10分程度で全ては終わった。長年連れ添ったナギ、デュラク、ルイーズの3人は互いに息を合わせ、1頭も逃すことなく猪共を駆逐せしめる。
ナギが二刀を手にしてから村に踏み込むファンゴもほとんどなく、村の被害はゼロ。奇跡と言ってもよい。
「終わった…?」
「うん……うんッ…!」
呆然と立ち尽くしたリーゼロッテがつぶやく。双剣を握り締めたままのその手を、エリザががしっと掴んで何度も頷いた。その目にはうっすらと光るものがある。
ようやく実感が湧いてきたリーゼロッテもエリザの手を握り返し、思わず双剣を放って抱き合った。
「「やったああ!!」」
「うをぉぉぉおおおおお!!! 勝ったぞおおお!!!」
わああああああ!!!
ファンゴが到着してから下手に騒いで刺激して、ナギの戦いの邪魔にならないようにと息を潜めていた湯治客が歓声を上げた。
多くの者が目にした、ナギがデュラクと背を預け合い戦う姿。それは、かつてない感動と驚愕の嵐を呼んだ。
「はぁ……」
「ナギさん!!」
「ナギッ!!」
役目が済んだとばかりに飛び去るデュラクを見送ったナギが、流石に疲れたとその場に大の字に倒れこみ、慌てて弟子2人が駆け寄った。ルイーズもナギの首もとで丸くなる。
「2人とも無事? 怪我は?」
「無いわよ、馬鹿ね! あんたが…あんたが守ってくれたんじゃない!」
「それはこっちの台詞です! 怪我は!?」
「大したものはないよ…ちょっと、疲れたし、血でベタベタするけど」
自嘲気味に笑って自分の手のひらを見やる。拍子に乾いた音を立てて太刀が転がった。その手をリーゼロッテがしっかと握り、胸に掻き抱いた。透明な雫がナギの血染めの手を濡らした。
「ちょ…汚れ「汚れません!」…まったく…」
「ありがとうございました……こんな、ボロボロになって……守って…くれて……」
自分より1回り大きな手を、リーゼは強く抱きしめた。近くに来ればわかる。この戦場で、如何に激しい戦いが繰り広げられていたのかが。
足の踏
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