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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
16 「双牙携えし竜は白き幻に見ゆ」
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 空を舞う。全体重をかけてその猪の首を貫くと、金縛りが解けて狂ったように突進してくるファンゴにまた斬りかかっていった。
 それはまるで竜巻のようだった。
 太古の昔、まだ竜が架空の存在だった頃。分け隔てなく、無慈悲に命を刈り獲っていく暴風の渦を、人は“竜がとぐろを巻いている”と言って恐れた。嵐と共にやってくる、森も、家も、人も。巻き上げ崩壊させ、天へと突き上げる災い。
 今、紅葉美しきユクモの地に流るる渓流の小川は、紅にその身を染めていた。

ブヒィ――!!!

 背後から自慢の牙を突き立てて突進してきたファンゴを察し、その額に太刀を突き刺しバク転、再び背に降り立つ。刃を抜いて吹く血飛沫に目を潰されたファンゴの鼻を削ぎ落とし、金属を引っ掻いたような叫びを上げる猪の頭に乗り移った。
 痛みにロデオのようにはねる猪の頭を渾身の力で踏み込んでその頭蓋を陥没させ、反動を利用して再び空に躍り出た。着地と同時にかかと落とし、眼球を飛び出させたファンゴ。ほぼ同時に左右から迫り来る2頭は横に回転しながら上に跳んで、裂傷を顔面のいたるところに負わせる。溢れる血に前が見えない2頭は互いの顎に自らの牙を突き刺し、悲鳴をあげた。
 右から来る大暴れの牙振りは飛竜刀を絡めてやり過ごし、左からはギリギリ外れた突進に急停止するファンゴの首を切り落とす。と思えば身を滑らせて右のファンゴの股下に入り込み下腹を掻っ捌いた。
 倒れ痙攣するファンゴから抜け出たナギの前に立つ白髭の大猪(ドスファンゴ)。ナギの底冷えするような笑みが、深まった。

ブモォォオオ!!

 ドスファンゴは地を掻き狙いを定めると、腹に響くような声とともに猛烈な勢いで突進してきた。進路上にいる配下の1頭が踏み潰される。
 横に跳んで避けたナギはすぐそばにいたファンゴに飛び乗りその短い尻尾を切る。痛みにびっくりしたファンゴは前に走り出し、ちょうど方向転換したドスファンゴの正面から突っ込んでいった。走るファンゴの心臓を一突きすると同時に飛び上がり、勢いにまかせて着地、緩慢な動きで振り向くと、一歩とともに切り払う。深く傷つけられあふれる血にまみれながらも、だがドスファンゴは大暴れし、なんとか背の上のヒトを振り落とそうと躍起になる。

ザシュッ

 追撃。深く入ったブラッドクロス改の毒液が血管に入り、みるみるドスファンゴの息が荒くなった。出血量もある。放置しても1分で死ぬだろう。
 直に立ってもいられなくなった大猪は砂埃を巻き上げながら倒れ、ひくひくと動くのみとなった。血の池は広がりつづける。
 群れの長を倒したからか、ファンゴのこちらを襲う様子がやや鈍った。
 さしものナギでも荒くなった息を深呼吸して抑え、血を吸い重くなっただけの羽織を脱ぎ捨てる。くるくると2本の太刀を回して握り直す
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