16 「双牙携えし竜は白き幻に見ゆ」
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を許してしまう。
道を進んだ先にあるのは当然、まだ半数以上の客が逃げ遅れて、固唾を飲んでナギの戦いを見ている村で。
急遽積み上げた、どれほど効果があるのかも分からない土嚢の外に身を躍らしたリーゼが、ナギ仕込みの軽いステップでファンゴの突進をかわしざまその横腹を横に長く斬りつけた。リーゼが正面から退くとほぼ同時にファンゴの眉間に突き刺さった2本の矢は、もちろんエリザだ。再びリーゼが双剣で斬り上げて、やっと猪はその強靭な生命の鼓動を止めた。
同じハンターだというのに、ナギはこの牙獣を一撃の下にほふっているのだから、凄いという他ない。大して年は変わらないのに、一体何が彼をあれほど強く育てたのか。
だが、深く考えている暇はない。すぐに2頭目に剣を振り上げて、エリザと共にファンゴを倒す。2人とも去年まで相手を必要以上に意識していたからか、パーティを組んで2ヶ月弱とは思えぬ息の合いっぷりだ。互いに互いがどう動いているかが自然に分かっていた。
その異変に最初に気づいたのはエリザ。貫通矢をファンゴの側面から撃ち込むと、眉をひそめながら「ねえ…」とリーゼロッテだけに聞こえるような声量で言った。
「なんか変じゃない?」
「何が!」
「ナギの剣がよ。動きが、なんか変わってきてる…?」
「え?」
4頭目を倒し終えて尊敬する師を見やる。相変わらず剣舞を舞っているかのような美しい戦いだが、確かにその太刀の振り方に戦闘開始と比べ違和感を感じた。
(あ…!)
右手1本で飛竜刀を操っているのだ。左手、ひいては左半身が完全に開いており、武器のないそちら側は無防備だ。大剣より重いというあの太刀を片腕で振るっているというのにも驚きだが、それよりなぜそんな隙だらけの戦い方になったのかが気になる。
一体どうしたというのか。倒す頭数は変わらないとはいえ、今までの隙の無い動きとは違う大振りな動き。
まるで、焦って思わず“素”が出たような。
まるで、そこに牙をもう1つ持つのが寧ろ自然であるような――。
そのときだった。ナギの補助をしていたはずのルイーズが、ファンゴのひしめく中から転がるように駆けてきたのだ。鍛え抜かれた脚力であっという間に2人のもとに来ると、エリザにずずいと近づいた。思わず半歩身を引くエリザ。
「な、なに!?」
「時間がニャいニャ。ちょっと甘く見てたニャ…エリザ、急いで太刀をひと振り持って来るニャ!! 今ある一番強いヤツニャ!」
「え? なんで――」
「にゃふぅ〜!! んニャこと言ってる場合じゃニャいんだニャ! 早く!! この村が猪に踏み潰されてもいいのかニャ!?」
「ハ、ハイッ!」
いつに無い気迫に、まだ無事な鍛冶店に飛び込む。
外まで聞こえるガラガラと荷をひっくり返す音にもルイーズはやきも
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