天子(笑)降誕
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ヴアンレタイア 東部王国、ニーチェ火山山腹
あたし、エリカ。一介の女冒険者だよ。今日は素材確保のため近所の火山に登っているんだ。
この火山にいる火焔トカゲの皮を集めているのが今日の仕事。
「今日の火山は穏やかだな〜。」
ピクニック気分でつい口笛を吹きそうになるが火焔トカゲは高い音を嫌う。
あと一匹分狩ればノルマ達成なのにそのようなへまは踏みたくない。
しかし、火山活動が穏やかで気分が良くなるのは仕方ない。
「お!いたいた。」
お目当ての獲物を見つけた。しかも今まで狩ってきた中でも大物だ。
相手はまだ気づいてない。
「よーし、魔法で───!?」
いざ詠唱しようとしたとき不意に地面が揺れた。地震だ。
「わわっ!とりあえず逃げ、きゃぁ!?」
今度は目の前の地面から火柱がでた。あまりの急さに驚いて尻餅を突いてしまう。
立ち上がろうにも腰が抜けて力が入らない。
「い、いやぁぁっ!!」
どんどん火柱は勢いを増し天高く登り、空を赤く染める。
急いで上級の防御魔法を詠唱し体全体を覆うようにする。そこに溶けた岩が降り注ぎ、防御魔法と反応して閃光を放つ。
「……終わった?」
溶岩の雨が止み辺りに焦げ臭いにおいが立ちこめる。
「……むぅ、くさい。」
火柱が噴出した穴から紫色の煙が上がっている。今まで生きてきて紫色の煙なんて見たことがない。
風が吹いて紫色の煙が流され、何かの影が浮かんできた。
足元に注意しながら穴をのぞき込むと影の形がはっきりし、その形に一致するモノが一瞬で浮かんできた。
「ひ、人!?」
訳も分からず立ちすくんでいたが、ふと崩落の音がしたので急いでこの人を引き揚げる。驚いたことに穴の底は溶岩でも熱い岩でもなくただの地面だった。
「この子何者?」
見た目は自分と大差ないような歳に見える。
じっくり観察しようにも山の上の方から小石が落ちてくる。本格的にまずいかもしれない。
「よいっしょっと。」
このよくわからない子をおんぶし、急いで山を下りる。
後には焼け焦げた麻袋が落ちていた。その中身は火焔トカゲの皮だった。
その後、再び山の上ろうとしたが火山活動が激しかったため断念したのは別の話。
また、その日の夕食がチャラになったのも別の話。
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