第百三十七話 捕虜の人々
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虜収容所の件は頼みます」
「御意」
帝国暦484年 4月1日
■ローエングラム大公領 捕虜収容所 アーサー・リンチ大将
俺がエル・ファシルで捕虜になってから早5年か、今俺は皇帝の娘ローエングラム大公の領土内にある捕虜収容所の最高評議会自治委員長をしている。昨年からこのローエングラム大公領に捕虜収容所が建設され、悪名高い帝国各地の矯正区から次々に捕虜や拉致市民が送られてくる。
今までであれば、同盟軍捕虜は犯罪者として矯正区に放置され、生きようが死のうが個人の才覚一つという地獄のような場所へ捨てられていたのであるが、皇帝の改革により、捕虜にも慈悲をという事で、この捕虜収容所が設立された。
その際俺は、請われて捕虜収容所最高評議会自治委員長へ任命され、各地から解放された捕虜の面倒をみることになった。送られてきた当初の捕虜達は皆目が死んでおり、やせ細り髭も髪の毛も伸びておらずに太いのは関節だけで、すっかりやせ細っていた。着ている物もボロボロの服ばかりで、とても軍人に見えない状態であった。
我々はまず、健康状態の把握に勤め、軍医や帝国側から派遣された医師や看護師の手を借りて栄養状態や病気の有無を調べなければならなかった。我々エル・ファシルで捕虜になった者達は、当初から捕虜収容所で過ごしてきていたため、彼らのような悲惨な目に遭っていなかった為に、当初は他の捕虜から敵のような目で見られ、攻撃も受けたが我慢して献身的に過ごした結果今では打ち解けるようになった。我々も彼らも同じ同盟人であるのだから。
捕虜収容所の生活は矯正区の人間にしてみれば天国と地獄の差だとのことだ。確かに話に聞く矯正区は地獄と言えよう、この収容所は大きな島一つを丸ごと利用しそこの中ならばどこへ行こうと自由であり、田畑もあり、娯楽施設もある。
まるで、同盟軍捕虜収容所のような大らかさであり、アバウトさでもあろう。ここまで捕虜収容所が変わったのは、皇帝の手により反乱を起こした貴族が粛正されそれに荷担していた内務省や社会秩序維持局が解体されたことも要因だと、帝国側の収容所所長から聞いた。
その際に、貴族が所有していた矯正区や拉致市民を助けて、この収容所へ編入できるように皇帝が尽力したそうだ。この話を聞いて、捕虜の中には皇帝陛下万歳と叫ぶ者も出る始末だ。概ね捕虜の間では、皇帝や皇女に関しては悪感情を持つ者が少なくなってきている。
やはり、正確な報道が捕虜に対しても成されて居ることも一因かもしれない。それによると皇帝は元々改革思考であったが、門閥貴族によりそれをできなかったが、今回の反乱でそのたがが外れ、尤も強烈な反対組織であった、社会秩序維持局が消え去った事でこれをなしえたのである。
帝国市民もこの皇帝の壮挙を挙って好意的に見ているようだ
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