第21話 真名
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たと言う事。
但し、
「いや。有希には知る権利が有る」
俺は、ゆっくりと首を左右に二度振った後に、彼女を見つめながら、そう答えた。
そして、更に続けて、
「今は確かに持ってはいない。しかし、その時。俺が、世界から消えるその時には、知る権利を持って居る可能性が高いと俺は思って居る」
俺の言葉に、少し哀しげな気を纏わせた彼女が、それまでと変わらない仕草で、俺の瞳を覗き込んでいる。
そして、彼女の方からは、決して口を挟もうとはしなかった。
「この世界に。有希が暮らして来た世界に俺が留まる事は出来ない、……と思う」
意識的に、今までは避けて来た台詞を彼女に対して告げた。
そう。俺は、この世界に取っては異質な存在。
まして、もし、この世界に俺の異世界同位体が存在しているのなら、そいつは間違いなく今、異世界へと送り込まれているはず。
そして、そいつが帰還するタイミングで、俺自身も同じように帰還させられる可能性が高いと思って居る。
「しかし、死んだ後の魂ぐらいなら、こちらの世界。有希の元にやって来たとしても問題はない」
俺の言葉に、少し強い調子で首を横に振る有希。まるで、これ以上、俺の言葉を聞きたくはない、……と言う、そんな強い拒絶の意志を伝えるかのようなその仕草。
しかし、俺の方は、そんな彼女の雰囲気にまるで気付いていないかのように、ただ、淡々と俺自身の思いのみを伝えて行く。
そう、ただ、淡々と……。
「魂だけとは言え、俺は俺。オマエさんにそれ以上、寂しい思いをさせる事は無くなる」
そう。真名を知られると言うのはそう言う事。そして、有希と言う名前は、俺の真名に繋がる名前でも有ると言う事です。
しかし……。
しかし、ゆっくりと首を横に振る有希。これは、拒絶を意味する仕草。
そして、
「あなたとの絆が有る限り、わたしはあなたの存在を感じる事が出来る」
だから、もう寂しくはない。
彼女はそう続けた。
そう。俺たち式神使いと言うのは、次元の仲介者。
俺の式神契約と言う物は、次元の壁を隔てようと無くなる物では有りません。それで無ければ、精霊界や魔界から、それぞれの式神たちを召喚する事など出来なく成りますから。
そして、一度結んだ式神契約は、双方が同意した時のみ解除が可能。俺は、最初に彼女に対して、そう教えましたから。
つまり、俺が向こうの世界に帰ろうとも、俺と彼女の間にこの式神契約と言う絆が存在し続ける限り、俺は彼女の事を。
そして、彼女は俺の事を、何時でも傍に感じ続ける事は可能なのです。
少女と表現するにはあまりにも完成され過ぎた容貌を俺に見せ、僅かに哀しげな雰囲気を発する有希。
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