第21話 真名
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魂を持つ存在が、同時に同じ世界に存在していた事実は有りません。
そう。例え時間跳躍を行える存在が関わった事件でも、その前提条件が崩された事が今までは有りませんから。
少なくとも、俺が知って居る範囲内では。
しかし、有希はゆっくりと二度、首を横に振った。
そして、
「あなたにこれ以上、迷惑を掛ける事は出来ない」
……と、静かに伝えて来た。
但し、これは拒絶と言う訳ではない。むしろ、俺や、水晶宮を気遣ったと言う事。
しかし、
「有希は俺や水晶宮の事を部外者で、自分の厄介事に巻き込んでいるように感じているのかも知れないが、これは残念ながら違う」
ひとつ、瞬きをした後、もう一度彼女を視線の中心に置いて、俺は、そう話し掛けた。
そう。少なくとも、一九九九年七月のハルヒを邪神への生け贄と為す呪を見逃した段階で、地球の生命体を護る側に立って居る存在と思念体は敵対関係に成っていますから。
確かに、情報統合思念体が、このまま傍観者を決め込む心算なら問題は有りません。
しかし、もし、現状の内政干渉に等しい介入をこのまま続ける心算ならば……。
「思念体と地球に住む生命体は、自らの未来を掛けた戦いを繰り広げる間柄となる」
それぐらい、クトゥルフの邪神と言う存在は、地球に生きとし生けるモノすべてに取って危険極まりない存在だと言う事。
クトゥルフの邪神に知識を求めるのなら、地球などで行わず、別の星系で行えと言うのです。クトゥルフの邪神の知識が必要なら、その門にして鍵だけを拉致して、宇宙の彼方だろうが、次元と次元の隙間だろうが、好きなトコロで、自分たちだけで幸せに成って下さい。俺たちなど巻き込まずに。
まして、情報統合思念体とは、俺が思う限りでも十分胡散臭い存在。
少なくとも、本当に銀河開闢以来生存し続け、進化を極めた存在と言うには、あまりにもやって居る事に矛盾が存在し過ぎていますから。
「つまり、思念体と俺達地球に住む生命体との間には、既に火種は燻って居て、俺が有希を奪い去ろうが、そのまま帰そうが、あまり関係はないと言う事」
彼らが、クトゥルフの邪神に対して、知識と言う名の情報を求め続ける限り、地球産の生命体とは不倶戴天の敵と成るしかないのですから。
地球上で、そのクトゥルフの邪神に接触する心算ならば……。
紫の髪の毛を持つ少女が、その銀のフレーム越しの視線の中心に俺を納める。その視線が持つ物は、僅かばかりの決意。
そして、彼女の名が持つ魔法のように感じられる。
そうして、
「あなたは、私に何を望むの?」
……と、短く問い掛けて来た。
静かな夜に響く彼女の声に、余計な感情の如き物を籠められる事はない。し
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