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ヴァレンタインから一週間
第21話 真名
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の問い掛けに対する彼女の答えは判っている心算でも有ります。

「思念体の思惑がどうで有ろうとも、わたしは、わたしの判断に従って行動する」

 有希が、真っ直ぐに、俺の黒と紅。二種類の瞳から視線を逸らす事もなく、そう答えた。
 揺るぎない意志の輝きを宿した瞳で。
 そうして、

「確かに、今までわたしが経験して来た周回に於いても、一時的には思念体の指示に従う事によって、キョンと呼称される人物の信頼を得る事は可能だった」

 ……と、続ける。
 そして、その彼女の答えから、それまで思い描いて居た思念体の目的だと思われる物が、そう的を外していなかった事が確認された。
 但し、今の段階では、その名づけざられし者(ハスター)とも、門にして鍵(ヨグ=ソトース)とも付かないその人物が、自らの正体について、気付いて居るのか、それとも無自覚で有るのかは定かでは有りませんが。

 他の神族の覚醒へのプロセスでも、自らが死に直面した瞬間、自らの正体に気付くような事例も少なくない事から類推すると、そのキョンと呼称される人物が、未だ、自分自身の事に対してまったく気付いていない可能性も少なくはないと思います。
 まして、這い寄る混沌(ニャルラトテップ)の一顕現だった場合、死した後にようやく、実はヤツの一顕現で有った、と言う事が判明した事例も少なからず存在するようですから。

「しかし、今年の七月七日に起きる事件により、一九九九年七月七日より帰還するキョンと呼称される存在に因るわたしへの信頼を維持し続けられる自信はなかった」

 ……有希の独白が続く。
 はっきり言うと、彼女が何を言って居るのかさっぱり判らないのですが、それでも、その信頼を得る為の行動と言う部分に、彼女自身の引っ掛かりと、思念体に対する疑念のような物が有ったのでしょう。
 そしてそれは、最初は問題なく信頼を得る事が出来る行動だったけど、過去に戻る事に因って、直ぐに何らかの不都合が発生する程度の稚拙な策謀を行ったと言う事ですか。
 しかし、彼女の懸念が杞憂に過ぎない物だったとすると、本当に、その情報統合思念体と言う存在が進化を極めた存在だと言う自称すらも、かなり疑わしくなって来ると思うのですが。

「もし、今のわたしが思念体の元に戻るのなら、わたしは、わたしの判断でキョンと呼称される存在の信頼を得られるように努力する」

 俺の疑問を他所に、言葉を続ける有希。そして、その答えは俺の予想通りの物。
 もっとも、そのキョンと言う正体不明の存在には、本来ならば絶対に近付くべきではない相手なのですが。

 そう。少なくとも今年の七月七日を過ぎて、以前に暮らして居た有希のマンションの和室を開くよりも前に、彼女単独で接触するには危険すぎる相手だと思いますから。
 何故な
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