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ヴァレンタインから一週間
第21話 真名
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「有希を情報統合思念体などと言う存在の元に帰す事は出来ない。それだけは確実と成ったと言う事やな」

 軽く首肯いた後に覚悟を完了させた俺の、その独り言にも等しい言葉。しかし、その内容は、銀河開闢と同時に発生したと言う、進化の極みに到達したと自称している情報統合思念体に対する宣戦布告にも等しい剣呑極まりない内容の言葉であった。

 そして、表情自体は勝負手を隠し持っている賭け事師(ギャンブラー)にも似た表情で俺を見つめながらも、その内面では明らかに動揺と、そして、かなり否定的な雰囲気を発生させている少女に対して、

「それでひとつ、有希に質問が有るけど良いかな」

 ……と、問い掛けた。
 尚、その時に俺が発して居たのは、先ほどの言葉にも似た、非常に落ち着いた雰囲気。少なくとも、有希の方から見ても激高する様子もなければ、精神が高ぶっている様子もないはず。
 まして、冷静なとか、冷徹な、……と言う表現が似合う雰囲気と言う訳でもなく、ただ、柔らかな表情と、そして、穏やかな、と表現すべき雰囲気を纏って居る。

 その俺の問い掛けに対して、ゆっくりと首を縦に振って答える有希。これは、肯定。
 そしてそれは、別に俺が強制したから心にもない反応を示した、と言う訳ではない、ごく自然な仕草。少なくとも、俺の優しげな態度に間違いがなかったと言う事でしょう。

「もし、このまま有希を情報思念体の元に帰して、有希自体の情報操作で、オマエさんが色々と余計な事を知って居る事実を思念体から隠し通せたとしよう」

 俺のその仮定に、少しの空白の後、僅かに首肯く有希。
 但し、その答えの際に彼女からかなりの陰の気が発生した。これは、おそらくは、俺の仮定自体の否定でしょう。
 つまり、彼女は、自らの情報隠ぺい能力では、思念体を欺き続ける事が出来ない事に気付いて居ると言う事に成ります。

 もっとも、それは当然の事なのですが。

 自らを作り上げた存在を欺き続けられる被創造物など存在するのは難しいでしょう。まして、その相手が、銀河開闢と同時に発生し、情報を集め続ける事で進化し続けて来た存在です。
 彼らに取って情報を集めると言う事は、俺達人間が息をする事のように容易い事のはず。
 まして、有希自身は、進化を極めた完全な存在と言うよりは、非常に不安定な人間の少女そのものの存在ですから。

「その場合。さっき、俺に話したくない。知られたくない、……と、有希自身が語った内容の命令が、再び下される事と成るはず。
 その時、今の有希ならば、一体、どんな判断を下す?
 今まで通り、思念体の指示通りの行動を行うのか?
 それとも……」

 有希の、とても綺麗な瞳を自らのそれで覗き込みながら、それでも怯む事もなく問い掛けを行う俺。
 それに、こ
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