第百十六話 な〜んか、寒気がするんだけどなぁ
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ギレンはふとステリアの体を見て心配そうな顔つきをする。
「そういえば、傷はもう平気なのかい?」
「うん、あの後トーゴに治してもらったから」
実は試合の後、一人でVIPルームに帰ろうと思ったが、体中に微細(びさい)な傷を負っていたので、帰るに帰れなかったのだ。
もしクィル達にその傷を追及されると辛いものがある。
まさか今まで闘武場で闘っていたとは到底言えるものではないからだ。
だから闘悟に何とかできないかと聞いてみると、この程度の傷なら、改変魔法ですぐ治せるとのことだったので、闘悟の魔法の恩恵に与(あずか)ったのだ。
その話を聞いて、ギレンは思案顔を作る。
「ふむ、トーゴくんという少年、本当に不思議な子だね」
「そうね、変人よ!」
ギレンの言う通り、とても不思議な男の子だが、いろんな意味で規格外な変人であることに変わりはないと思っていた。
「はは、でもなるほど」
「ん?」
「どうやら我が妹は、あの少年に夢中なのかな?」
「なっ! そ、そそそんなわけないじゃない!」
顔を真っ赤にしながら必死に首を横に振る。
そんな妹の戸惑う姿を、楽しそうに見つめる。
「だ、だってアイツはそんなんじゃなくて、ただの興味本意というか、好奇心が疼(うず)いたというか……」
彼女の言い訳を聞いてギレンはまたも思案顔を作る。
「ふむ……スティは彼のことになると普段見せないような表情をするね?」
「ち、違うわよ! それは……それは……だって……」
何と言い訳したらいいか思い浮かばず言葉に詰まる。
「でも彼は平民だよね?」
「……それはどういう意味なの?」
瞬間真剣な表情を作り問い質(ただ)す。
どういった意図でそんなことを言うのか気になったのだ。
「スティは王族、彼は平民。それが真実だよ」
彼は微笑を崩して真面目に言う。
(身分違いにもほどがあるってこと?)
そう思うと胸がムカムカしてきた。
平民と王族だからといって同じ人間であることには変わらない。
身分など全く気にしないステリアにとっては、今のギレンの言葉は聞き捨てられないものだった。
「そんなの関係無いわ! 私が気に入ったのがたまたま平民だっただけよ! ……あっ!?」
恥ずかしいことを言ってしまったと気づきハッとなる。
「はは、そうだね。ごめん、冗談だよ。それで? スティは彼をどうしたいんだい?」
ステリアの反応を見て満足気に頷く。
その反応を見るために、わざと彼女を怒らせるようなことを言ったのだ。
だがステリアはそんなギレンの企みには気づいていない。
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