第百十五話 ド、ドベなのか……
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。
正真正銘、互いに全力を尽くす大会なのだ。
クィルにしてみれば、どちらにも勝ってほしいし、どちらにも負けてほしくは無いのだろう。
だが勝者は一人。
そして闘えば怪我をしてしまう。
それが何よりも不安が膨らむ要素に違いない。
優しいクィルらしいと闘悟は思った。
「大丈夫だって」
「え?」
「オレ達は殺し合いをするわけじゃねえぞ?」
「……はいです」
それでも納得はいかないのだ。
やはり傷つくことが何よりも恐ろしい。
だからこそ不安になる。
そんなクィルの不安を消すようにそっと彼女の頭を撫でる。
「ふぁ……ぁう……」
突然のことで声を漏らして驚く。
「んじゃさ、試合が終わったらクィルが怪我を治してくれるか?」
「私が……ですか?」
「ああ、聞いてるぞ? 補助魔法……とりわけ治癒魔法が得意なんだろ?」
「トーゴ様……」
「クィルが治してくれるなら、オレもミラニも安心して試合できる」
「……」
「だから、な?」
頭を撫でながら微笑むと、クィルは頬を染めてこちらも笑みを浮かべる。
「はいです!」
まあ、オレは時間が経てば怪我が治る体質になったけど、多分ミラニは多少の怪我はするだろうし、こう言っておけば、クィルも安心するだろうしな。
闘悟は不老不死の恩恵で、死なない体を手に入れ、怪我なども時間が経てば自動的に治癒するのだ。
その後も大会の話で盛り上がり、お開きを迎えた。
お開きを迎えて解散する時、ステリアの近くにやって来た、彼女の兄であるギレンが耳元で囁(ささや)くように言う。
「スティ、あまりおいたはいけないよ?」
「……へ? に、兄様?」
咄嗟のことで何を言っているのか分からず聞き返す。
ギレンは二人きりになれる場所へ向かう。
「あのスレンという女性、お前だろ?」
「なっ!? なななななっ!?」
言葉にならないほどの衝撃を受ける。
すると彼はステリアの頭に手を置く。
「安心しなさい」
「ふへ?」
「父上には話していないよ。もちろん気づいてもいない」
「あ……」
その言葉で正直にホッとする。
「だけどね、スレンがスティだと気づいた時の、この兄の気持ち……分かるかい?」
「ギレン兄様……」
スレンがステリアだと気づいたのは、やはりその闘い方もそうだが、兜が半壊した時、露出した赤い髪を視認した時だった。
それまで漠然と疑問を持っていただけだったが、その時確信したのだ。
「本当に怖かったよ。あんなに吹き飛ばされて、心臓が止まるかと思った」
「ごめんなさい……」
ステリアはシュンと
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