第四十四話 不老不死その四
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「幹部候補生学校の服装のチェックはかなり厳しいからな」
「違反の制服とか駄目なんですか?」
「違反どころではない」
それで済まないというのだ。
「定められた制服を着てだ」
「さらに身だしなみを整えてないとですか」
「駄目なのだ」
「じゃあ着崩すとかは」
「問題外だ」
最早その域に達していた。江田島では。
「とてもな」
「そうなんですか」
「八条学園では違反の制服はないか」
「あることにはあるでしょうけれど」
それでもだというのだ。
「何十種類もありますからね。丈が長いのも短いのも」
「ブレザーもだな」
「本当に色々な種類がありますから」
「違反の制服を着なくともだな」
「はい、好きな制服を着られます」
それが八条学園なのだ。制服も充実しているのだ。
「僕もこの詰襟の他にもブレザーも持ってますから」
「黒の詰襟以外にもか」
「白い丈の長い、膝までのも持ってますよ」
所謂白の長ランである。
「海自さんみたいな」
「うちの礼服は丈は普通の詰襟と同じだがな」
「それはそうですけれど」
「しかしだ。海自の幹部候補生学校はだ」
「そこまで厳しいんですか」
「本当に塵一つとしてだ」
制服に着いていては駄目だというのだ。
「当然アイロンもしっかりとかけておかないとだ」
「駄目なんですか」
「毎日チェックされる」
これは本当のことだ。江田島では。
「若し少しでもミスがあれば再びチェックされる」
「厳しいですね」
「こんな場所は他にはないだろうな」
「刑務所みたいですね」
「実際に戦前は赤煉瓦の監獄と呼ばれていた」
あまりにも厳しい為だ。兵学校はそこまで言われていたのだ。
「島だから容易には逃げられないしな」
「本当に刑務所みたいだったんですね」
「俺ももう一度生きたいとは思わない」
「工藤さんもですか」
「俺がいたのは八ヶ月だが」
自衛隊の中から部内選抜で入った場合は八ヶ月なのだ。このコースは所謂準キャリ扱いとなる。キャリアは防衛大学か一般大学から入った場合だ。
「それでもだ」
「厳しいんですね」
「厳しいだけでなく時間も余裕もない」
「それが八ヶ月ですか」
「最長で一年だ」
「うわ、凄いですね」
「誰もが二度は生きたくなくなる場所だ」
それが江田島だというのだ。
「そうした場所だ」
「それでその場所で、ですか」
「この制服になった」
黒と金の海上自衛隊幹部の制服にだというのだ。
「個人的には好きな制服だ」
「そうなんですか」
「そうだ。それでだ」
「はい、それでですよね」
「今日ここに来た理由だが」
話は本題に入った。
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