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三つのオレンジの恋
第一幕その八
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 これには悲劇役者であっても呆けた者であっても言葉は同じだった。黒いハイヒールにこれまた黒いストッキングに包まれた脚は確かに見事なものだった。
「それに下着も」
「色気があるな」
「美人だし余計に」
 喜劇役者も詩人もそのショーツに目が釘付けになっていた。ストッキングはガーターでありショーツは黒である。肌が白いだけにその黒がかなり目立つ形になってしまっている。
「いやいや、これは面白い余興で」
「サービス満点」
 ピエロ達がおどけて踊りながら囃し立てる。
「まさかこんな美女が出て来るとは」
「しかもこんなものを見せてくれるとは」
「全く全く」
 貴族達も満足している。そして王子も。
「あはは、何あの女の人」
 王子の席から転げるようにして笑いだしたのである。
「パンツまで見せて転んで。喧嘩だけでもおかしかったのに」
「しまった、魔法が」
 ファタ=モルガーナはここで王子にかけていた鬱病の魔法が解けてしまったことを悟った。

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