第九十五話 戦禍は広がる
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『雷』を落とされてしまった。
トリステインに戻ったマクシミリアンは、カトレアの機嫌を取る事に腐心して、毎夜毎夜、カトレアの部屋に入り浸り子作りに励んだ。
だが、マクシミリアンの努力も空しく、カトレアが懐妊をする事は無かった。
深夜のトリステイン王宮。
今日もカトレアの部屋のドアを叩いたマクシミリアンに、カトレアは意を決してある頼み事を切り出した。
「……なに? 子供が出来る秘薬が欲しい?」
「……はい」
半裸で大きなベッドの上であぐらを掻くマクシミリアンに、向かい合って座ったネグリジェ姿のカトレアは申し訳なさそうに頷いた。
「しかしなぁ、僕達、まだ20歳になったばかりだろ。焦る必要ないんじゃないかな?」
元現代人のマクシミリアンは気に留めなかったが、ハルケギニアの常識では20歳は十分年増……カトレアとその周辺は焦りを覚え始めた。
「でも、マクシミリアンさま。結婚して6年、新世界から戻ってきて2年程ですが、そろそろ子供を授かっても良い頃なのですが、その気配はありません。わたし不安で……」
「それで秘薬の力を借りようと? うーん。分からないなぁ」
マクシミリアンはカトレアの焦りが分からない。
マクシミリアンは常々、『子供は授かるもの』と思っていて、革新的な改革をトリステインにもたらしながらも根っこの部分は保守的だった。
その事が彼自身も気付かず、秘薬を使って無理矢理妊娠するような行為を忌避していた。
だからマクシミリアンはカトレアの願いを理解できず、難しい顔をして暗に断った。
「マクシミリアンさま……」
「心配するなって、まだ20歳になったばかりだ。焦る事はない」
そうマクシミリアンはカトレアを説得した。
だが、カトレアは表情を綻ばせながらも心は晴れる事とは無かった
そんなカトレア達の焦りをよそに、マクシミリアンはペリゴールをブランデルブルク辺境伯領に派遣し通商条約を締結させた。
ブランデルブルク辺境伯は強力な軍事力を持つ割には国力は低く、反乱以前は政敵であるオーストリ大公から食料を援助して貰う事で軍を維持してきた経緯があった。
穀倉地帯であるシレージェンを取っても、すぐに食料を得られる訳ではない。
その為、持ち前の備蓄食料では軍を維持できなくなる事は子供でも分かる問題で、そこに目をつけたマクシミリアンは、トリステイン豊富な食料を提供する代わりに辺境伯領内でのトリステイン商人の優遇を約束させた。
具体的には、ブランデルブルク辺境伯領とザクソン大公領との間に流れるエルペ川河口近くにある中洲の都市『ハンマブルク』を自由都市化させ、北東ゲルマニアのトリステイン商人の本拠地とさせた。
マクシミリアンは元商人のアルデベル
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