第九十五話 戦禍は広がる
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無く、その他の兵はポラン騎兵に討ち取られるか道に迷って野垂れ死にするかあるいは恭順するか、辛うじてボヘニア地方まで逃げ帰ってもチェック人に殺されるか等、様々な理由で屍を晒した。
……
「おお、ザクソン大公。よく戻られた」
ヴィンドボナのホークブルク宮殿に命からがら戻ったザクソン大公を、皇帝となったアルブレヒトが労った。
だがザクソン大公はアルブレヒトの労いに表情一つ変えない。
「……閣下。一つ聞きたいことがございます」
労われたザクソン大公は剣呑な態度で、アルブレヒトが座る玉座の前で跪いた。
「なにかな? ザクソン大公」
「我々の再三の補給要請を無視し続けた理由をお聞かせ願いたい」
「補給要請? そんなの知らんぞ。それよりも、この半年、一切の連絡を寄越さなかったのは頂けない」
アルブレヒトの言葉にザクソン大公は驚いた顔で顔を上げた。
「お待ちいただきたい。補給要請と合わせて報告書も何度も送りましたぞ!」
「いや、届いていない。敗戦の責任から逃れるために騙っているのではないか?」
「何ですと!? その様な事を言われるのは心外ですな。ならば勝手にするがよい!」
「ま、待たれよ!」
怒ったザクソン大公は、謁見の間から立ち去ろうとすると、アルブレヒトは自分の失言を反省し、ザクソン大公をなだめた。今は失敗をなじる事よりも反乱を鎮圧す事とが先決だ。
それにアルブレヒトは、謀略と政略は得意だが軍事は余り得意ではない。猛将として鳴らしたザクソン大公が離脱すれば、ゲルマニアの軍事力の低下は計り知れない。
幸い、アルブレヒトの説得でザクソン大公の怒りは収まり、本題は後方かく乱を行った犯人探しへと移った。
「しかし、一切の連絡を絶たれるとは、やはり後ろで糸を引いているのはヴィルヘルムの裏切り者か」
「裏切り者? 閣下、それはどういう事ですかな?」
「それはだな……」
ザクソン大公はアルブレヒトの口からブランデルブルク辺境伯の反乱を聞くと、苦虫を噛み潰したような顔で天井を見上げた。アルブレヒトのライバルだったブランデルブルク辺境伯が公も簡単に反乱を起こした事に、色々な意味で呆れたのだ。
「こうもあっさり反乱を起こすとはヴィルヘルムの奴め。奴には慎みというものが無いのか……いや、そんなものは無かったな」
同じ選帝候という事もあって、ブランデルブルク辺境伯ヴィルヘルムの人となりを知るザクソン大公は、かつての同僚の行動に今回の事件の全て黒幕の可能性を感じ取った。
もっともそれは、ザクソン大公の勘違いなのだが事態は妙な方向へ曲がりだした。
「閣下。此度のポラン地方の反乱は、ブランデルブルク辺境伯が黒幕に相違ありません」
「ザクソン
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