第五話 ※
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〈サーチ〉で調べてみたところ、この辺りの区域には水源が無かった。もしあれば温泉が出来たのに、非常に残念だ。
無い物ねだりをしても仕方がないので、サクッと気持ちを切り替えて次善の策を実行する。
「次善の策とは言っても、水源の替わりになるものを用意するだけだけどね。えーと……ああ、あったあった」
『倉庫』から取り出したものを見てシオンが首を傾げた。
「ただの聖杯のように見えますが」
そう、俺が取り出した物は中身が空っぽの聖杯だ。純銀製の聖杯を手にコレの用途を説明する。
「とある昔にイソンという村が水没したんだ。別に近くに河があったわけでも、ましてや雨が降ったわけでまないのに、たった一日で村は水の中へと消えていった。当然、周辺の地域も被害にあったね。結局、当時は原因が解らず、ただ村が水没したという事実だけが記録された。――んで、その原因ってのが、コレなわけ」
方眉をピクッと震わせたシオンがマジマジと聖杯を眺めた。
「実はコレ、一度魔力を通すと半永久的に際限なく水を生み出す機能があるんだ」
シオンと出会う前の頃、当時、見聞を拡げるために世界各地を放浪していた時に件の村にたどり着いた。 その頃にはもう村は水没しており、水面が地平線まで続いていたのを覚えている。
何かないかなと思いサルページして手に入れたのが、延々と水を吐き出し続けていた聖杯だった。
「そんなことがあったのですか……」
「まあね。今回はこれを有効活用する。生み出す水は冷水だけど、温水になるようにすれば問題ないでしょ」
そうと決まれば広場から風呂場へと続く道を作り、その先に小さい空間と、大きく広い空間を用意する。小さいのは脱衣所、大きいのは浴室だ。
闇系統魔術の〈テラーバイト〉と地系統魔術の〈地動殻〉を駆使して空間を整え、腰の深さまである浴槽を作った。
続いて天井に〈ライト〉の術式をデカデカと刻む。
水源となる聖杯には古代魔法の一つである創造系統の上位魔法〈概念付与〉を掛け、冷水ではなく【温水】を生み出すように作り替えた。
さらに聖杯を囲うようにして石像も作成。モチーフは「癒しの女神」。美意識を総動員させて魂を込めて作成した渾身の作品だ。
スレンダーな全裸の美女が優雅に微笑むその姿はまさに理想の女性。まだ聖杯を起動していないため温水は出てこないが、設計上では両手で抱えた瓶から涌き出るようになっている。
ついでに、涌き出る温水の一部を空間系統魔法で転移させてシャワーを使えるようにした。
ものの十数分で無機質な空間は高級感溢れる浴室へと様変わりした。岩肌の床は均一に均され、雰囲気
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