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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第九幕 「桃の花 滴と共に 空を舞い」
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サー・スタビライザー類を多く内蔵し、機動力や旋回性の要になる部分でもある。また、IS自体の重心を考えても脚部はそれなりに重くある必要性もある。必然、どのISも脚部は大型化する。
しかし風花の脚部はそれが最小限しかついていないように見える。関節部分は通常より関節の柔軟性を重視した構造になっており、またカカト部分の設置面積が狭くなり、短めのヒールがついているような外見だ。この構造は地面を蹴る時に足先に力が入りやすい反面、普通に歩く際バランスを取るのが難しくなる構造でもある。なぜこれほど細くする必要があったのかが分からない。

次に、スラスターと非固定浮遊部位(アンロックユニット)がおかしい。
スラスターの形状が、従来型のものと“全く違う”。とても推力を確保できるとは思えないほどに、異様なまでに小型なのだ。大二つ、小四つ、計六つのバーニア・スラスターのようなものが機体の背中と腰に近い部分についているだけ。通常のISの肩部にあるべき推進翼を一切排除したその構造は、お世辞にもまともに使えそうには見えない。が、それ自体は珍しくはあるがおかしくはない。そういった機体は通常アンロックユニットによって推力を確保する。・・・そう、通常は。
風花のアンロックユニットは、それを確保するには小さく、しかも明らかにスラスター代わりの構造ではなかった。打鉄に似た形状のそのユニットは打鉄のそれより一回り小さく、単純な盾として使うにも少々心許ないものと化していた。これでは機体の推力が確保できないではないか。この機体は何故機動力と防御力を同時に潰しているのか、開発者の意図が全く分からない。

だがセシリアが何よりも異様に思ったのは、風花の手、より正確には(マニュピレーター)だった。
一言でいえば、その掌は余りにも人体のそれに似せすぎていた。丸み、骨の構造、関節部の異常なまでの柔軟性。特に物を握る内面部分は鉄ではなく見たこともない素材で作られており、その“人間の掌”への拘りっぷりは一種の芸術性すら感じられるほどであった。きっとあれの製作者に義手を作らせたら世界最高の仕事をしてくれるだろう。

(変態技術者とはよく言ったものですわ。確かにあれは変態的と言っても過言ではありません。しかし・・・)

セシリアは判断しあぐねていた。機体のコンセプトが全く分からない。
ただの妙ちくりんな欠陥機だと一笑に付すには、そのISは異様過ぎたのだ。
恐らくあの機体には何かある。しかし、その何かが全く分からない。
だが、それも勝負の醍醐味というものだとセシリアは笑った。
好奇心旺盛な子供がマジシャンのマジックを待つかのように。

(この試合もただで終わりそうにはありませんわね)

(機体の勝手がまだうまく掴めないな・・・先ずはこの機体の最高速度を確かめるか)


《第2
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