第三十五話 反撃
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?」
「幾つかある。買った物も有るし貰った物も有るな。お前はそちらの方には関心が無いから分からんだろうが」
「申し訳ありません」
ブラウンシュバイク公が頭を下げたが、どうも今一つ腑に落ちないといった表情だ。ちょっと可笑しくなった。この切れ者の青年が先程から困惑している。
「こちらに手心を加えてくれと言ってきたので余程に奇抜なものか、或いは向こうでも著名な芸術家の作品かと思ったのですが……」
「違ったという事ですか」
「はい」
私の答えにブラウンシュバイク公が考え込んでいる。さて、そろそろあれを言わないと……。
「ビーレフェルト伯爵ですが、彼は自殺ではありません。私が社会秩序維持局に命じ始末しました」
一気に応接室の空気が重くなった。皆の視線が痛い。しかし、あれは已むをえなかった……。
「彼は内務省がバッファローの密猟に加担し毛皮を得ていると思い込んでいたのです。私が内務省はそれには関係していないと言っても信じなかった。或いはそう思い込まされていたのかもしれませんが……」
あの当時内務省は不祥事続きだった。サイオキシン麻薬の捜査には携われず警察総局次長ハルテンベルク伯爵は故意にサイオキシン麻薬の密売組織を見逃した件で自殺していた。その上さらにトラウンシュタイン産のバッファローの密猟に絡んでいるとなったらとても持たない。一つ間違えば内務省は解体されていただろう、それでなくても内務省の権限が大きすぎる事には批判の目が有るのだ。
「何人か宮内省の職員が行方不明になっていますが……」
ゲルラッハ財務尚書がこちらを見ながら問いかけてきた。
「それは私ではない。おそらくはノイケルン宮内尚書達か、フェザーンが手を打ったのだと思う」
皆が顔を見合わせている。リヒテンラーデ侯が視線を向けてきた。
「卿が辞任したいと言うのはこのままではフェザーンに利用される、そう思っているのだな」
「ええ、彼らは私がビーレフェルト伯爵を始末した事を知っています。必ず接触してくるでしょう」
彼方此方で溜息を吐く音が聞こえた。或る者は天を、或る者は床を、そして目を閉じている者もいる。少しの間沈黙が落ちた。重苦しい、息苦しい雰囲気が身を包む。判決を待つ被告人のような気持ちになった。
「面白くないな、今卿に辞められては改革に反対しての事と勘違いする者が出るだろう」
「それも有る、それも有るがフェザーン、ノイケルン達がフレーゲル内務尚書を殺すという事は有り得んかな、リヒテンラーデ侯。内務尚書だから利用価値が有ると見て今は生かしておいている、そうでなければ厄介な秘密を知っている邪魔者でしかあるまい」
リッテンハイム侯が渋い表情をしている。そうなのだ、どちらにしても内務尚書を辞める事は極めて危険だ。しかしこの男達に隠し事をしたまま内務尚
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