第三十五話 反撃
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そうでは有りませぬ。私も内務尚書を務めている身です、平民達の不満が高まっているのは分かっています」
皆が訝しげな表情で視線を交わしている。ややあって大公が問いかけてきた。
「では何が問題なのだ」
「お恥ずかしい話ですがフェザーンと聊か不適切な関係が有りまして……」
「……本当か?」
「直接では無いのですが……」
私の答えに大公が腕を組んで唸った。合点がいかぬ、そんな表情だ。
「今少し詳しく話してくれぬか、どういう事かな、直接では無いとは」
「三年前に起きたトラウンシュタイン産のバッファローの毛皮の件ですが、あれに絡んでいるのですよ、リヒテンラーデ侯」
皆が驚いた表情をしている。誰かが“あの件か”と呟いた、エーレンベルク元帥だろう。
「実は或る人物に頼まれて警察の臨検を緩めるように指示したのです」
「なるほど、警察は大した事が無かった、あれですか」
ブラウンシュバイク公が二度、三度と頷いている。当事者だ、直ぐに分かったらしい。そしてこちらに視線を向けた。
「或る人物とはどなたです。おそらくは宮内省の高官ではありませんか」
皆の視線がまた厳しくなった。
「直接頼んできたのは宮内省侍従次長カルテナー子爵です。しかしノイケルン宮内尚書も絡んでいるのは分かっています。彼らはフェザーンと組んでバッファローの毛皮を密かに売買していたのです」
誰かが溜息を吐いた。よりにもよって宮内省の尚書が陛下の財産を盗もうとしたのだ。溜息も出るだろう。
「卿はバッファローの毛皮を運んでいると知っていたのか?」
リッテンハイム侯が躊躇いがちに問いかけてきた。
「知りませんでしたよ、今思えば間抜けな話ですがフェザーンからの戻りの船だと聞いていたので反乱軍の物を取り寄せたのかと思っていました」
私の言葉にブラウンシュバイク公を除く皆が顔を見合わせた。皆バツが悪そうな表情をしている。それを見てブラウンシュバイク公が訝しげな表情をした。
「義父上?」
「あ、うん」
問いかけられた大公が困った様な表情をしていたが仕方が無いと言った表情で話し始めた。
「まあ大っぴらには出来んが反乱軍から絵画や彫刻等の芸術品を取り寄せる事は珍しく無いのでな」
「芸術品? 民生品は向こうの方が質が良いと聞いていますが芸術品もですか……」
思いがけない事を聞いたと言った表情を公がすると大公が益々困った様な表情をした。
「それも有る、それと質が良いと言うよりも変わった物が有ると言う事かな。帝国では創られんような物、つまり取締りの対象になるような物が向こうには有るのだ。それだけに珍重されている」
「はあ、取り締まり……」
「まあルドルフ大帝が頽廃していると禁止した様なものだな」
大公の説明に公が呆然としている。
「ではこの屋敷にも
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