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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三十五話 反撃
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不思議な事を言う、皆が訝しげな表情をした。
「政府が決めた範囲内での徴収であれば例え領内で暴動が起きても卿らは帝国が保障した権利を行使しただけの事。基本的にその事で咎められることは有りません。帝国貴族としての存続を帝国が保障します」
公の言葉に彼方此方で頷く姿が見えた。

「しかし政府の命に背いて制限を超えた税を徴収した場合は保障しません。場合によってはカストロプ公同様廃絶という事も有ります」
「……」
「この制限が気に入らぬと言うなら反乱を起こしても構いません。宇宙艦隊は何時でも鎮圧する用意が有る」

皆顔を見合わせている。顔色を窺い他人がどう考えているかを確認しようとしている。反乱に利が有れば反乱を起こそう、そう考えているだろう。税の制限など嬉しい事ではないのだ。その様子を見てブラウンシュバイク公が軽やかに笑い声を上げた。貴族達がギョッとしたような表情をする。愚かな……、どうしてそうも読まれ易いのか……。

「或いはフェザーンが反乱の援助を申し出てくるかもしれません。しかし……、気を付けるのですね」
「……」
公が意味有りげに笑みを浮かべている。

「彼らは卿らの勝利を望んでいるのでは有りません。帝国の混乱を望んでいるだけです。卿らが敗勢になれば用済みとして平然と切り捨てられますよ。何処かの誰かのように……」
ブラウンシュバイク公の言葉にリヒテンラーデ侯が低く笑い声を上げた。この二人、人を脅すために生まれてきたような男達だ。貴族達が顔を蒼白にしている。

「脅すのはその辺りにしてはどうかな、ブラウンシュバイク公。皆蒼褪めている」
リヒテンラーデ侯が含み笑いをしながら公を宥めると公は肩を竦めた。
「脅しじゃありません、忠告しているのです。フェザーンは他人を利用するのが上手ですからね、ついでに切り捨てるのも」
「なるほど、まあそうだの」

二人が声を上げて笑う、他人の事は言えんだろう、この二人も相当なものだ。しかしフェザーンか……。さてどうする、どうやら身辺がキナ臭くなってきたかもしれない。私だけではあるまい、この場に居る貴族の少なからぬ人間がフェザーンとは表に出せない関係を持っているはずだ。ここは思案のしどころだな……。

「改革はこれで終わりでは無い、これからも続く。だが無理はせぬ、卿らにも受け入れられるよう緩やかに進めるつもりだ。それ故卿らも愚かな事を考えぬ事だ。平民達の不満が爆発して革命が起きれば我らは全てを失う、改革に不満を持ち反乱をおこしても同様だ、分かるな」
リヒテンラーデ侯が諭す様な口調で皆に話しかけた。しかし蒼白になりながらも不満そうな表情、納得がいかないといった表情をしている人間が居る。果たしてどうなるか……。



帝国暦487年  8月 25日  オーディン  ブラウン
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