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立派な魔法使い 偉大な悪魔
第六章 『邂逅』
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体を白刃が貫いた。
 詠春はフォールンへは何もしていない。側面から突撃してきたブラッドゴイルを切り裂き、フォールンへ向き直っただけだ。フォールンを貫いた刃はそのまま横薙ぎ、フォールンの胴体は半ばから二分され、力なく落ちていった。

「このような相手に後ろをとられるとは。流石に鈍りましたか?」

 そこにはゲーデルがいた。刀を振るって血を飛ばし、指で眼鏡をかけ直しながら詠春へ言葉を投げかける。

「はは、随分腕は落ちたよ」

 ゲーデルの言葉に、詠春は面目ないといった感じに答えた。
 詠春はかつてゲーデルに剣術を教えていたことがある。その時からゲーデルは非凡な才能を見せていた。そして先程の剣を見る限り、それは今でも健在であることは詠春も認めていた。
 ところが師匠である詠春は、関西魔術協会の長という立場もあり、久しく戦いの前線を退いていた。そのため剣の腕が鈍くなったことは、明白なようだ。
 もっとも、全盛期から腕が落ちただけであり、未だに詠春の剣は鋭いことに変わりはない。
 短い会話を交わしている二人へ向かって、先程詠春が斬り伏せたはずのブラッドゴイルが再び突進してきた。正確には、二体に分裂したブラッドゴイルだ。
 ブラッドゴイルは魔力が込められた石像に、穢れた血を注ぐことで生まれる悪魔だ。その体は固い石から赤い液状になり、攻撃を加えられても分裂する。そのため、詠春によって斬られたブラッドゴイルは絶命することなく増殖したのだ。
 突進する二体のブラッドゴイルが更に速度を上げ、二人に突撃した時だった。ブラッドゴイルの体に衝撃が走った。
 その原因を理解する前に、ブラッドゴイルの身体は赤い液状の体から石の姿へと変わっていた。
 ブラッドゴイルの性質は、近代兵器登場以前の時代に身につけた一種の耐性のようなものである。そのため、近代以降に登場した銃器のような兵器にはまだ耐性ができておらず、攻撃を受けても分裂できないのだ。
 だが詠春もゲーデルも銃器の類は持っていない。つまり彼等がブラッドゴイルを攻撃したのではない。では誰がブラッドゴイルを元の石へ姿を戻したのだろうか。
 それはネギ達の近く。バレットM82を構えスコープを覗いている、龍宮真名だ。
 彼女は一瞬のうちに二体のブラッドゴイルにそれぞれ二発づつ、つまり計四発を撃ち、石へと変えたのだ。
 石の姿となったブラッドゴイルは重力に従い落ちていく。龍宮もそれを追うように銃身を僅かに動かす。そして二度引き金を引いた。
 強烈なブローバックと共に銃口から放たれた弾丸は障気の混じった大気を切り裂き、目標へ着弾した。対物狙撃銃の名の通り、威力は十分だ。石になったブラッドゴイルを、文字通り粉砕した。

「ネギ先生、私はここで突入の援護をする。私も向こうへは後から行くよ」

 
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