GGO編
百十八話 少女と少年の選択
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「え?」
言いながら、恭二は着ていたジャケットのポケットに手を入れる。其処には分かって居た通り、少し金属質なプラスチックの感触が有った。
詩乃は少し考えるようなしぐさを見せた後、苦笑して言った。
「うーん、ちょっと、ね。ほんとに、今度の大会、色々あったから。あぁ……でも……」
「?」
「……ほんとに、ホントに大変だったんだけど……でも今度の大会は、出て、正解だったな。って思うよ」
「…………」
言いながら、詩乃は少し自嘲気味に微笑んだ。
「その……今までずっと、GGOで一番になったら、ホントに強くなれるかな。って思ってたけど……そう言う訳でも、無かったみたいで……」
「?どう言う事?」
「うーん、何て言うかね、その……私、大会中に例の発作が起きそうになって……その時、私の近くにいた三人に、凄く助けてもらったの」
ゆっくりと、思い出すように、詩乃は言葉を紡いでいく。
「その時、一人に言われたんだ……“自分の過去から逃げるな”“苦しかったら支えてやるから、その原因と向き合え”って……」
「…………」
「結局、昔の事って、忘れたくても忘れられないみたい。……だから、もう少し、今度は違う形で、頑張ってみようかな。って思えてね……一人で頑張るのも、しんどくなって来てたし……あ、勿論、新川君は色々私の事助けてくれてたけど」
慌てたように言う詩乃に、新川は苦笑して返した。
「ううん。僕なんか全然何も出来てないから。良かったじゃない、朝田さん。でもそれじゃあGGOは……」
「あ、ううん、その辺りはまだ……でも、今までとは少し違う頑張り方もいいかなって、ね……その……新川君も、色々、これからもよろしく」
「…………」
詩乃のその言葉を、新川は俯いて聞いて居た。同時に、ポケットの中で手を掛けていた物に、力を込める。
「……やっぱり、駄目か……」
「え……?」
すぐ目の前にいた詩乃ですら聞こえないほどの声量で呟かれたその言葉。聞き逃した詩乃は聞き返すが、それに新川が答える事は無く……
「…………」
新川はゆっくりとその場から立ち上がる。
「……新川、君?」
「……朝田さん」
ポケットに手を入れたまま、立ち上がり、見下ろすような形で自分を見た新川から言いようの無い圧迫感のような物を感じて、詩乃の言葉が少しだけ震える。
「僕、今日はもう帰るね」
しかしそんな新川から次に出た言葉は、何時ものはにかむように微笑んだ言葉だった。
不意打ち気味なその言葉に一瞬硬直してから、ようやく脳が思考能力を取り戻し、詩乃は首をかしげる。
「え、えぇ?だって、まだケーキ食べてないじゃない。それに、もう少しでお湯湧くよ?」
「あ、あはは……ごめん、ちょっと親から呼び出し掛かったみたいで、さっき見た
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