第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
[10/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は身を守るような動作を、悲鳴を口にすることはなく。ぐっと歯を食いしばり、じっと耐えていた。
「―――あんたには関係ないでしょっ!!」
パンッ! と再度乾いた音が部屋の中に響く。
音の発生源は、シエスタではなくルイズ。
一体何が起きたのか理解できないのか、頬を張られた衝撃で顔を横に向けた姿で、呆然とした表情を浮かべている。ルイズは鋭い痛みを発する頬に、ゆっくりと指を伸ばす。熱を持つ頬に指先が触れ、敏感になった頬に痛みが走る。再度頬に走る痛みに顔を顰めたルイズが、キッ、と眉根を釣り上げ、感情が見えない瞳で見下ろしてくるシエスタを睨み付けた。
「―――ッどういうつもりッ!?」
「……関係ない―――ですか」
痛みにより、一瞬で怒りの沸点を超えたルイズが、噛み付くようにシエスタに怒鳴りかかる。
しかし、シエスタはそんなルイズの怒りを欠片も気にした様子を見せることなく。ただ悲しみに満ちた瞳でルイズを見下ろしていた。
「―――そう、ですね……あなたは貴族様で、わたしはただの平民……だけど……だけどミス・ヴァリエール」
部屋に入ってきてから、厳しい顔をしかしていなかったシエスタの顔が、優しげな笑みに変わっていた。
その瞳に秘められたものは、その声に潜むものは……憎しみではなく悲しみ、怒りではなく淋しさ。
シエスタの急な様子の変化に、ルイズの喉元まで出かかった罵声が喉に引っかかる。
怒りに沸騰していた頭に冷たい風が入り込み、一瞬だけ戻った知性が、先程自分が口にした言葉の酷さを訴える。自分が口にしたあまりの言葉に気付き、ルイズの顔から血の気が引く。
ルイズの様子に気付いたシエスタの顔に浮かぶ寂しげな笑みに、微かに暖かなものが混じる。
「わたしは、あなたを友達だと思っていました。例えあなたにただの平民だと思われていても、わたしはあなたを友達だと」
膝を曲げると、シエスタはベッドの上のルイズに視線を合わせた。先ほどとは違い、怒りではなく、慈愛が混じるシエスタの視線に戸惑い、ルイズはシエスタの視線を顔を背ける。
怯えるように顔を背けるルイズの姿に、シエスタはくすっ、と笑うと、懐から取り出したハンカチで、ルイズの顔を拭き始めた。
「っ、ぁ、うぅ」
「だから、友達がこんな死にそうになっていたら、心配しますし、どうにかしたいと思うんですよ」
「シエ、スタ?」
眉根を緩やかに曲げたシエスタは、ルイズの顔を拭き終えぐっしょりと濡れたハンカチを懐に収めると、膝を伸ばして立ち上がる。
「ミス・ヴァリエール。少しは目が覚めましたか。サモン・サーヴァントのことは、確かにわたしにはよく分かりません。だけど、シロウさんのことは良く知っています。それは、あなたもですよね。あのシロウさんが、そう簡
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ