第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
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の姿が、更にその噂に真実味を加えさせた。
だがやはり、たった一人で七万の軍を止められる筈がないと、その噂を信じない者は多く、そしてそれは上層部に顕著であった。そんな中、主人を守るため、七万の軍勢の足止めしに向かった使い魔の噂を信じる者も少数ではあったがいた。そして、その人たちは絶望に染まり、人形のように意志が感じられなくなったルイズに慰めの声をかけ始めた。士郎がアルビオン軍の足止めに向かったことが真実ならば、残念だがもう死んでしまっているだろうと。
だが周囲のそんな者たちの親切心が、慰めの言葉が、ルイズの心に生まれた穴を少しずつ大きくしていく。
とある使い魔がアルビオン軍を足止めに向かい、そして死んだ。その噂は、同じ船に乗っているシエスタの耳に入らないはずがなかった。
「何か言ったらどうなんですか……何か……何か……っ」
「…………」
「……まさかあんな噂を……信じている訳ないですよね」
「…………」
「―――ッ答えてくださいっ!?」
襟を握る手に更に力を込めたシエスタは、睨み殺さんばかりにルイズを睨みつける。
「あんな……あんな噂を信じ込んで、勝手に絶望して……こんな所で腐っている場合ですかっ!! アルビオンに戻ってシロウさんを探そうとは思わないんですかっ!?」
ルイズを怒鳴りつけ、息を荒げながらシエスタはルイズを睨み続ける。大の大人でも竦み上がる程の怒声と眼光を向けられながらも、ルイズは何の反応も見せない。そんなルイズの様子に、シエスタの苛立ちと怒りは上限を越える。ルイズの襟元を掴む右手を離し、シエスタは大きく振りかぶる。
次の瞬間、甲高い乾いた音が部屋の中に響――
「…………ぃわよ」
「え」
くことはなかった。
シエスタは、右手を大きく振りかぶった格好で、目の前のルイズを不思議そうな顔で見下ろす。小さな声だったが、間違いなくルイズの声であった。戸惑うシエスタに追い討ちを掛けるように、ルイズの声が再度響く。
「何も……何も知らないくせに……偉そうなこと言わないでよ……っ」
「―――っ……何も、知らない……ですか?」
憎しみと絶望が満ちる声と共に向けられるルイズの瞳に、シエスタが息を飲む。
人形のようなルイズの瞳には、何時の間にか強い意志の光が鈍く輝いていた。ルイズの瞳に輝く光り、それは、シエスタが今まで見たことがないものであった。絶望の闇が満ちる中、微かに光る鬼火のようなその光は、見るものを不安と恐怖におとしいれる。
ルイズの瞳に輝く光に魅入られたように、シエスタの身体はピクリとも動かない。
「あなた……わたしがあんな噂を信じているとでも思ったの?」
怒り、憎しみ、苛立ち……溢れそうな感情が詰め込まれた言葉がシエスタに向けられる。
「…
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