第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
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の上に出来た水溜りに波紋を作り出す。
ノックもせず部屋に上がり込み、桶に入った大量の水をぶっかけられる。しかも、それをやったのが、貴族でもなんでもないただのメイド。普通では考えられないどころの話ではなく、理由がなんでさえ許されることなく、その場で殺されたとしても何ら問題がない。しかし、そんな出来事が起きたというにも関わらず、ルイズは何の反応も示さない。悲鳴も怒声も上げることなく、それどこころか、身動き一つしない。混乱が極まって、何の反応も出来ないということではない。それは、目を見ればハッキリと分かる。ただ、何も感じていないだけだと。そのことを、ルイズをじっと睨みつけていたシエスタは直ぐに理解していた。
「何時までそうしているつもりですか」
シエスタの声は、微かに震えていた。
「……もう三日も何も口にしていない……このまま……死ぬとでも言うつもりですか」
「…………」
それは、瞳に宿る怒りのためか……それとも……。
シエスタが手に持った桶から手を離す。乾いた音と水音を立てて、桶が床に転がる。空になった両の手を、ルイズに向かって伸ばし始める。
「……何か言ったらどうなんですか」
「…………」
シエスタの問いに、ルイズは何も答えず、ただ暗く澱んだ視線を向けるだけ。そんなルイズの胸ぐらを、シエスタの両手が握り締め。
「何をやっているんですかッ!!」
勢い良く持ち上げた。
引き裂かんばかりに握り締めた襟から鈍い音が響く。勢い良く引き上げられたルイズの額とシエスタの額がガツンと音を立ててぶつかる。かなりの衝撃と痛みがあるはずなのだが、眉根を釣り上げルイズを睨み付けるシエスタの顔からは、苛立ちと怒り以外の感情を感じられなかった。そしてそれはルイズもまた同じであった。茫洋とした瞳と、何の表情も浮かばない様子からは、どれだけ小さな感情さえ感じられないままである。
ほんの少し顔を動かすだけでキスが出来る程の距離で、シエスタはルイズを怒鳴りつける。
「あなたは……あなたは士郎さんの何なんですかっ!? あれだけ……あれだけ何時も何時も士郎さんのことを自分の使い魔だと言っているくせにっ! 士郎さんはまだ帰ってきていないんですよっ! っそ……それどころか……し、死んだ……という話も……あなたも……聞いている筈です」
「…………」
追いつかれる筈のアルビオンの軍勢が現れることなく、ロサイスからの撤退が間に合ったのは、ルイズの使い魔である士郎が、アルビオン軍を足止めしたのではないかと、撤退中の船の上で噂になった。士郎のその人外の強さは、ある程度周知されていたため、普通は鼻にも掛けられない筈のその噂は一蹴されなかった。それに加え、半狂乱状態で悲鳴を上げながら士郎の名を叫ぶルイズ
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